日本大百科全書(ニッポニカ) 「棹菓子」の意味・わかりやすい解説
棹菓子
さおがし
形状により分類された菓子で、長方形の棒状、棹形をしており、棹物あるいは棹物菓子ともよばれる。棹物は本来、包丁を入れた切り口のすがすがしさから、料理の面で蒸し物、寄せ物、流し物など口取り用のものがつくられた。棹菓子としては蒸し物でういろう、流し物で駿河屋(するがや)(和歌山)の煉羊羹(ねりようかん)が時代的に古い。とりわけ練り羊かんは、蒸し物のように蒸籠(せいろう)で蒸し上げてから棹形に包丁を入れるのではなく、当初から包丁を入れても切り端のむだが出ないよう箱に流して固める仕法が用いられ、棹菓子の代表格となった。金玉(きんぎょく)かんもこの仕法による。職人の間ではこの流し物の箱を槽(ふね)といい、包丁を入れた拍子木型を一棹、二棹といった。棹菓子はまとまりよく、格の高い菓子とされて贈答に用いられたが、用いるに際しても不時の人数の増減に対応して、包丁で適宜に切り分けられる調法さが喜ばれた。昔から「羊かんを薄く切ると根性(心根)をみられる」というのは、それほどにも高級品とみられていたからであり、観光地の土産(みやげ)品に羊かんが多いのも、高級品意識が底流に生きているためであろう。棹菓子は、ういろうや羊かんのほか、鹿児島市の軽羹(かるかん)、木目羹(きもくかん)、徳島市の小男鹿(さおしか)、岐阜県中津川市の山路(やまみち)、ささ栗(ぐり)、新潟県長岡市の棹物柚餅子(ゆべし)、名古屋市のおちこち、京都市の洲浜(すはま)、雲竜、京観世、島根県安来(やすぎ)市の千鳥羹(かん)などの名品がある。
[沢 史生]