南アジア系移民(読み)みなみアジアけいいみん(英語表記)South Asian Migrants

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「南アジア系移民」の意味・わかりやすい解説

南アジア系移民
みなみアジアけいいみん
South Asian Migrants

インド亜大陸,つまりインドを主とする南アジア諸国からの海外移住者とその子孫総称。かつては印僑と呼ばれたが,今日ではその表現は用いられない。 1833年大英帝国で奴隷貿易が禁止されたのち,大英帝国内各地での労働力不足を補うために英領インドから大量の契約労働者が送り出された。その一部には本国に帰らず,現地で財をなすものも出てきた。第2次世界大戦の終了時,海外インド人移住者は約 420万人と推定され,居住地は,主として東南アジア (太平洋地域を含む) ,東アフリカと南アフリカであった。 1947年のインド・パキスタン分離独立後はイギリス連邦の宗主国イギリスやカナダ,北アメリカに移民が集中するようになった。加えて新アフリカ諸国のアフリカナイゼーション (アフリカ化) の進行とともに,イギリスなどへの移住が増加した。イギリスでは,91年国勢調査によれば総人口 5486万人のうち南アジア系移民はその二世,三世を含め 148万人 (2.7%) に達する。その約半分は工場労働者や事務職員であるが,弁護士,大学教師,医師,政治家なども多い。これら海外移住者はアフリカ系カリブ人とともに,イギリス社会の国民戦線のような極右集団による人種差別対象にされる場合が多く,イギリス政治の重大な課題となっている。

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