日本大百科全書(ニッポニカ) 「南ア真実和解委員会」の意味・わかりやすい解説
南ア真実和解委員会
なんあしんじつわかいいいんかい
South Africa's Truth and Reconciliation Commission
アパルトヘイト(人種隔離)時代の人権侵害と政治的抑圧を究明し、その被害者によって歴史を見直すために設けられた南アフリカ共和国の委員会(委員19人)。1994年9月、国会の議決によって設けられ、委員長にはノーベル平和賞受賞(84年)のデズモンド・ツツ大主教を任命、96年4月に初の公聴会が開かれた。人権侵害、免責、犠牲者の賠償と復権の3小委員会に分かれ、2年間にわたって犠牲者の証言を求めることになった。97年1月、白人の元警官5人が、反アパルトヘイト運動のカリスマ的指導者スティーブ・ビコの殺害を告白したと発表。また同年10月、犠牲者に賠償金(年額平均2万1700ラント=約56万円)を6年間支払うよう政府に提案した。しかしボタ元大統領をはじめ喚問を拒否する旧政府高官も多く、委員会は98年8月に作業の未完を発表。同年10月にアフリカ民族会議(ANC)はじめ反アパルトヘイト運動側の人権侵害にも触れた長文(約3500ページ)の最終報告書を提出した。
[奥野保男]