国指定史跡ガイド 「南滋賀町廃寺跡」の解説
みなみしがちょうはいじあと【南滋賀町廃寺跡】
滋賀県大津市南志賀にある寺院跡。現在の南滋賀集落と重なるように位置し、川原寺(かわらでら)式伽藍(がらん)配置の寺院である。川原寺は母である斉明(さいめい)天皇の菩提を弔うため、中大兄皇子(なかのおおえのおうじ)(天智天皇)が創建したという。発掘調査の結果、3町(約310m)四方の寺域があった可能性があり、出土した瓦は白鳳(はくほう)時代の川原寺式複弁蓮華文系統と規模がやや大きくデザインも異なる単弁系統があり、平安時代の瓦もみられる。複弁蓮華文軒丸瓦(のきまるがわら)は、飛鳥寺(あすかでら)(法興寺)や薬師寺、大官大寺(大安寺)と並ぶ飛鳥四大寺の川原寺跡から出土することから川原寺式と呼ばれ、多くの白鳳寺院や四大寺跡から出土している。蓮華文方形軒瓦は廃寺跡から西方約200mにある榿木原(はんのきはら)遺跡の登り窯で焼成されており、白鳳時代~平安時代に南滋賀町廃寺に葺く瓦を製作していた工房跡で、瓦窯や粘土貯め施設、作業建物などが見つかっている。現地では白鳳時代の登り窯が移転保存されており、見学できる。金堂や小金堂、塔跡などの主要伽藍は瓦積み基壇で、大津京との関係も注目されており、1957年(昭和32)に国の史跡に指定された。京阪電鉄石山坂本線南滋賀駅から徒歩約10分。