金堂(読み)こんどう

精選版 日本国語大辞典 「金堂」の意味・読み・例文・類語

こん‐どう ‥ダウ【金堂】

〘名〙
① (堂内に金色の仏像を安置し、また、その装飾も金色に光り輝いていたために名づけられたもの。一説に、仏を金人というため、本尊仏を安置した堂をこう名づけたともいう) 伽藍の中心で、一寺の本尊を安置した堂。平安中期頃までは、本尊を安置する堂を一般に「金堂」と称していたが、以後は「本堂」と呼ばれるようになった。
※書紀(720)推古一四年四月(岩崎本室町時代訓)「丈六の銅の像を元興寺の金堂(コンタウ)に坐(ま)せます」
② 金箔(きんぱく)を押したり、または、金銀をちりばめた殿堂。金色の堂。〔拾遺記‐一〇〕

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デジタル大辞泉 「金堂」の意味・読み・例文・類語

こん‐どう〔‐ダウ〕【金堂】

日本の寺院の伽藍がらん配置の中心をなす建物で、本尊を安置する堂。本堂。

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日本歴史地名大系 「金堂」の解説

金堂
こんどう

[現在地名]高野町高野山

壇上伽藍のほぼ中央に位置する南面の堂。北東に大塔、北西御影堂がある。現在の建物は一層で、昭和九年(一九三四)の再建。高野全山の本堂である。本尊は阿如来で他の諸像とともに、昭和元年焼失後に造像されたもの。鎌倉時代の「高野山順礼記」によると、内陣の須弥壇には本尊丈六の阿如来像(一説に薬師如来)を中心に、東に金剛薩坐像・普賢延命菩薩立像(ともに高さ八尺五寸)、不動明王坐像(高さ七尺二寸)弘法大師木像を安置し、西に金剛王菩薩坐像・虚空蔵菩薩立像(ともに高さ八尺五寸)、降三世明王坐像(高さ七尺二寸)、善女竜王画像一鋪が安置されていた。弘法大師木像と善女竜王画像を除く七体は創建当初の像といわれてきたが、昭和元年に焼失した。また内陣の東西には長日供養のための金剛界・胎蔵界の両曼荼羅を掛け、その前に両壇が置かれる(続風土記)

〈大和・紀伊寺院神社大事典〉

〔名称〕

堂ははじめ講堂といったが(金剛峯寺建立修行縁起)、のち嵯峨天皇の御願によって完成したことから御願ごがん堂と称された(御手印縁起)。久安五年(一一四九)五月日の金剛峯寺焼失修復注進状草案(又続宝簡集)には「正暦五年甲午七月六日大塔并講堂但今人多称金堂、廿一間僧房為雷火焼失但御影堂残留之」とあって、金堂とも称されている。また薬師堂とも称された(白河上皇高野御幸記)

〔創建〕

創建年代は不詳であるが、一山伽藍のうち最初に建立に着手されたと伝える。金剛峯寺建立修行縁起は「三間四面講堂一宇、柱長一丈六尺、奉安置一丈六尺阿如来、八尺五寸四菩薩、七尺二寸不動・降三世・并七躯廿一間僧坊一宇。

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改訂新版 世界大百科事典 「金堂」の意味・わかりやすい解説

金堂 (こんどう)

古代仏教伽藍の本尊を安置する主要堂で,後世の本堂にあたる。仏殿ともいわれ,中国,朝鮮では大雄宝殿などとも呼ぶ。金堂の呼名は百済,新羅にあり(《三国遺事》),金人(本尊仏)の堂という表現から生まれたらしい。初期には伽藍の中心部,塔の北に接して置かれた。ふつう金堂は1棟だが,飛鳥寺では塔の3方にあり,川原寺では中金堂のほかに回廊内にも西金堂があった。平城京の興福寺では中金堂院のほかに東金堂院,西金堂院が置かれるなど,複数の金堂をもつ寺もあった。飛鳥・白鳳時代の金堂は正面5間の重層建物が多く,内部に人を入らせない厨子のような性格があった。白鳳時代末から正面性の強い七間堂もでき,両脇に回廊をつけるものも多くなる。堂の平面は大きくないが,柱は太く高く,組物は三手先(みてさき)など複雑なものとし,軒は深い二軒で威容を示した。平城京内の大寺は重層や裳階(もこし)つきとされ,中小寺院では単層の堂とした。塔が離れて置かれるようになると金堂は横長に大きくなり,伽藍の中心的存在となる。日本で現存する最古の金堂は法隆寺金堂で,東大寺大金堂(大仏殿)は,奈良時代には正面88m,高さ47mで史上最大の金堂であった。
伽藍配置
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百科事典マイペディア 「金堂」の意味・わかりやすい解説

金堂【こんどう】

仏教寺院(伽藍(がらん))を形成する中心的建造物で,その寺院の本尊を安置してある仏殿。インドでは香堂と呼ばれる。中国,日本では内部を金色に塗るのでこの名がある。平安時代以降は本堂とも呼ばれた。飛鳥(あすか)時代の法隆寺(西院),奈良時代の唐招提寺,平安時代の当麻寺醍醐寺の各金堂は代表的遺構である。→伽藍配置
→関連項目飛鳥寺式伽藍配置大官大寺

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金堂」の意味・わかりやすい解説

金堂
こんどう

七堂伽藍(がらん)の中心となる堂舎で、本尊仏を安置してある堂をいう。一般にいわれる本堂や仏殿に相当する。堂内が金色に塗装された堂という意味ではなく、金色(こんじき)の仏像を安置したので名づけられたのであろう。代表的な金堂には、法隆寺(飛鳥(あすか)時代)、唐招提寺(とうしょうだいじ)(奈良時代)、室生寺(むろうじ)(平安時代)、醍醐寺(だいごじ)(鎌倉時代)、興福寺(こうふくじ)(室町時代)、教王護国寺(東寺、桃山時代)などのものがある。

[阿部慈園]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金堂」の意味・わかりやすい解説

金堂
こんどう

仏教寺院で本尊像を安置するために造られた堂。仏殿,本堂ともいう。塔の背後または横に建設される。奈良時代には一寺院で複数の金堂を併置した例もある。最古の遺例は法隆寺の金堂 (7世紀後期) 。

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防府市歴史用語集 「金堂」の解説

金堂

 お寺の中の本尊[ほんぞん]を納める建物です。お寺の中では一番重要な建物になります。基本的には1つの寺に1つの金堂が置かれます。

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事典・日本の観光資源 「金堂」の解説

金堂

(滋賀県東近江市)
美しい日本のむら景観100選」指定の観光名所。

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