原始文化(読み)げんしぶんか(その他表記)Primitive Culture : researches into the development of mythology, philosophy, religion, language, art and custom

日本大百科全書(ニッポニカ) 「原始文化」の意味・わかりやすい解説

原始文化
げんしぶんか
Primitive Culture : researches into the development of mythology, philosophy, religion, language, art and custom

イギリス人類学者E・タイラーの2巻からなる代表的著作。1871年刊。この本でタイラーは、文化の概念を明らかにしたうえで、文化の発達、進化を論じている。とくに注目されるのは宗教アニミズム起源説である。彼によれば、宗教はアニミズムに始まり、死霊精霊信仰へ進み、多神教、最後は一神教へ進化する。これは当時流行した進化論の文化への応用であり、のちに多くの批判を受けるが、この本によって初めて人類の多様な文化が学問の対象として体系的にとらえられたのであり、人類学の基礎を築いた重要な著作の一つである。

[板橋作美]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の原始文化の言及

【タイラー】より

…キューバ旅行の体験に基づいて,《アナウァク――古代および現代メキシコ人》を1861年,29歳のときに発表し,この体験と着想をさらに学問的に深めて65年には《人類の原初史および文明発達に関する研究》を著した。彼の名を一躍高めた代表作は,71年に発表された2巻から成る大著《原始文化――神話・哲学・宗教・言語・芸術および慣習の発達に関する研究》である。この中で展開されたアニミズム論は,宗教に関する最初の包括的考察として,学説史的価値を持っている。…

【遊戯】より

…後者は文化人類学など人類史の再構成にかかわる学問分野で問題にされたもので,遊戯と文化の発生継起の先後関係という形をとって論じられた。この問題分野に先鞭をつけた一人であるタイラー(《原始文化》)は,今日の子どもの遊戯はかつてのおとなのまじめな文化(儀礼や生産技術など)の残存であると指摘する。タイラーは遊戯の起源論を構築するために残存概念を提出したわけではなかったが,その影響は大きかった。…

※「原始文化」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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