一神教(読み)イッシンキョウ

デジタル大辞泉 「一神教」の意味・読み・例文・類語

いっしん‐きょう〔‐ケウ〕【一神教】

一切を創造して支配する唯一絶対の神のみを認めて信仰する宗教。ユダヤ教キリスト教イスラム教など。唯一神教。→多神教

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精選版 日本国語大辞典 「一神教」の意味・読み・例文・類語

いっしん‐きょう‥ケウ【一神教】

  1. 〘 名詞 〙 ただ一つの神だけの存在を認め、それを信仰の対象とする宗教。唯一神教単一(拝一)神教、交替神教などに区別される。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教など。⇔多神教
    1. [初出の実例]「一神教の裡面は一魔教なり」(出典:他界に対する観念(1892)〈北村透谷〉)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「一神教」の意味・わかりやすい解説

一神教
いっしんきょう

複数の神々を崇拝する多神教と異なり、一つの神のみを信ずる信仰を説く宗教のこと。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、初期のゾロアスター教などに代表される。一神のみを崇拝するといっても、その崇拝の仕方や神観念の相違によって、一神教はさらに唯一神教monotheism、拝一神教monolatry、単一神教henotheism、交替一神教kathenotheismなどに分類される。狭義の一神教とは唯一神教のことである。

 唯一神教においては、崇拝される神が万物を支配する唯一の神であり、他の神々はそのままでは容認されない。宗教史的にみれば、他の神々は神ではなく諸霊として格下げされたり、その実体を失って唯一神の属性的存在となる場合が多い。このような唯一神教には、他の教えを邪教とする排他的な面と、すべての人々に唯一神の恩恵が及ぶという包容ある側面とがある。そこで唯一神教は外に向かって教えを広めようとする宣教の傾向をもつ。始めにあげた各宗教がこれにあたる。拝一神教とは、特定の社会集団(部族、民族、都市など)が、他集団の崇拝する他の神は容認しつつ、自らは特定の一神のみを崇拝する宗教形態である。古代イスラエルの初期ヤーウェ崇拝はこれであった。単一神教は、多神教の世界において、特定の一神を主要神として集中的に崇拝するもので、あたかもその神が唯一至上神であるかのようにみえる宗教現象である。この場合とくに、単一の主要神を次々と交替させて崇拝するものを交替一神教とよぶ。

 一神教、とくに唯一神教の成立についてはいくつかの説明がある。多神教から発展したとする説、宗教の原初形態としてすでに一神教があり、多神教はその退化した形態とみる説(原始一神教説)、一神教は創唱者によって始まるとする説などである。このうち始めの2説は今日あまり支持されていない。

[月本昭男]

『岸本英夫編『世界の宗教』(1965・大明堂)』『J・M・キタガワ編、堀一郎監訳『現代の宗教学』(1970・東京大学出版会)』

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改訂新版 世界大百科事典 「一神教」の意味・わかりやすい解説

一神教 (いっしんきょう)
monotheism

原始宗教と高等宗教の別なく,一神をたてて崇拝する宗教をいう。一神教の神は太陽のような自然神の場合もあるが,一般的には抽象的で男性原理を有する神とされ,全知全能にして万物の創造主と考えられた。たとえばユダヤ教がヤハウェ神を,キリスト教が〈父なる神〉を,イスラム教がアッラー神をたてて崇拝しているのがそれである。一神教は一般に神と人間のあいだの断絶を強調するが,それは一神教の起源が砂漠に関係があることによるとされている。自然的景観の荒涼たる砂漠では,地上から超絶する天上の神が祈願の対象とされたからである。この砂漠の一神教は農耕社会に基盤を有する多神教と対比されるが,しかし歴史的には農耕文化との接触によって偶像崇拝や多神教的な要素をとり入れていった。たとえばカトリック教会やギリシア正教会がそうである。なお日本では,近世以降流入したキリスト教の信徒(キリシタン)は,多神教的風土の厚い壁にはばまれて,人口の1%を超えることがなかった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「一神教」の意味・わかりやすい解説

一神教
いっしんきょう
monotheism

唯一の神を信仰する宗教形態。ふつうユダヤ教,キリスト教,イスラム教の3つがその典型とされるが,一神教的信仰形態としては歴史上次の3種が区別できる。 (1) 単一神教 henotheismまたは交替神教 kathenotheism 多神教の一種。古代インドや古代エジプトの宗教にみられるように,多神より一神を選んで最高神とする。状況に応じて最高神が代るので交替神教ともいう。 (2) 拝一神教 monolatry 唯一神を信仰しつつ事実としての他民族の固有神崇拝をも認める立場。ヤハウェ信仰がその典型。 (3) 絶対的一神教 すべての民族・国民が唯一の神を信ずべきものとする立場。一神教の成立については,アニミズム的多神観から単一神教を経て一神教へ発展するという進化説と,原始的な至上者信仰から多神観へ退化するという原始一神観説 urmonotheismの2種がある。有神観としてはほかに汎神論的宗教もあり,一神教が最高の宗教形態であるかどうかは断じがたい。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「一神教」の解説

一神教(いっしんきょう)
monotheism

崇拝する神の数による宗教分類上の名称。複数の神を信じる多神教に対し,唯一神のみの信仰を認める宗教をいう。ヤハウェを崇めるユダヤ教,アッラーに帰依するイスラーム,父なる神とその子イエス・キリストおよび聖霊を三位一体的に信仰するキリスト教などが,その代表。歴史的には,エジプトのアメンヘテプ4世(イクナートン)のアテン神崇拝が,一神教の最も早い例として知られている。

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百科事典マイペディア 「一神教」の意味・わかりやすい解説

一神教【いっしんきょう】

唯一の神を崇拝する宗教。英語ではmonotheism。一般に一神教の神は抽象的で男性原理を有し,全知全能の創造主と考えられることが多い。ユダヤ教のヤハウェ,キリスト教の〈父なる神〉,イスラムのアッラーなどがそれにあたる。多神教との対比で,一神教の多神教からの進化や優位が説かれることがあったが,主にキリスト教の立場からする謬見である。→多神教

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旺文社世界史事典 三訂版 「一神教」の解説

一神教
いっしんきょう
monotheism

唯一神を信仰する宗教
人類の宗教観念の発生の過程では,一般に自然物崇拝の多神教がみられるが,オリエントでは多神教優勢の中でヘブライ人がヤハウェ(ヤーヴェ)一神教を創始し,これを母体に同じく一神教のキリスト教も生まれた。なお,古代エジプトのアメンホテプ4世によるアトン崇拝は一神教の最も早い例であり,キリスト教のあとでは,イスラームが創始された。

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世界大百科事典(旧版)内の一神教の言及

【神】より

… その第1は,世界の諸宗教を多神か一神かによって整理しようとする考え方である。すなわち,主として古代国家の宗教にみられる多神教polytheism(ギリシア,ローマ,エジプト,日本),多神のうち時に応じて特定の一神を重要視する単一神教henotheismや交替神教kathenotheism(古代インドのベーダ宗教),ただ一柱の神のみを絶対視する一神教monotheism(ユダヤ教,キリスト教,イスラム教),そしていっさいの存在物に神的なものの内在を想定する汎神教(論)pantheism(仏教)という分類がそれである。その第2は,神を人格的(形態的)存在と非人格的(非形態的)存在との2種に分ける考え方である。…

【神】より

…また神話学者はそれを自然神とか擬人神といった枠組で分類し,宗教人類学者は死霊や精霊や祖霊,あるいはマナのような呪力と神々との相互連関の問題をとりあげた。そのほか一神教と多神教の両極をたてて,その中間領域にさまざまな神観念の変化型を指摘する宗教学者もいれば,神観念の発達にも進化と退化があったとする社会学者もいた。また農耕社会や狩猟社会と神観念との対応というテーマを追求したり,聖性と神性という枠組によって神の輪郭を明らかにしようとするなどの立場があった。…

※「一神教」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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