普及版 字通 「厶」の読み・字形・画数・意味
厶
2画
(異体字)私
7画
[字訓] すき・わたくし
[説文解字]
[字形] 象形
耜(すき)の形で、私の初文。私とは、隷属的な耕作者をいう。〔説文〕九上に「姦なり」とし、「韓非曰く、頡(さうけつ)の字を作るや、自ら營むを厶と爲す」と〔五蠹〕の文を引く。その文は「私に背く。之れをと謂ふ」という文につづき、を厶(私)に(そむ)く形と解するものであるが、は公・公宮の廷礼を行う場を平面的に示すもので、初形は厶に従う形でない。田神を意味する(しゆん)はに従い、は耜(すき)の形を頭とする神像の形。耜の従う(し)が厶の初文で、耜の先の象である。厶を私にして姦邪の意とするのは、私田が公有田に対して公共性を欠くとする考えかたを、その字の用義に移したもので、後の字形による解釈である。
[訓義]
1. すき、すきのあたま。
2. 私の初文。わたくし。
[古辞書の訓]
〔字鏡集〕厶 カタマシ・ワタクシ・ヒガム
[部首]
〔説文〕に・の二字を属し、〔玉〕に(りん)を鄰の古文とする。を奪にして姦謀を示すとするのは、が・と声近く、その通用の義であろう。の従う厶は、羌人の辮髪の形で、厶とは関係がない。また鄰の初文とされるは、漢碑にもその用例をみない。
[声系]
〔説文〕に厶声として、私など三字を収める。私は厶((すき))をもつ耕作者。耕作者を私有することが、公に対する対待義となり、公私と対称するようになった。
[語系]
厶・私sieiは同声。私は厶の繁文として、のちに作られた字。耜zi、tzhiも声義の関係があり、とは開墾することをいう。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報