1 公に関することと私に関すること。こうし。
「左の大臣も、―、引きかへたる世の有様に」〈源・賢木〉
2 朝廷と民間。朝野。
「かくて今は御禊、大嘗会など、―の大きなる事におぼし騒ぐに」〈栄花・日蔭のかづら〉
3 表向きと内輪。
「―おぼつかなからず」〈枕・三一〉
おおやけとわたくし。公的な事と私的な事。「公私のけじめ」「公私にわたる」「公私混同」
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中国において,古代より論議され続けてきた対立的命題。江戸期の荻生徂徠は次のように明解に定義する。〈公なるものは私の友なり。衆の同じくする所,これを公といい,己の独りもっぱらにする所,これを私という〉(《弁名》)。公・私が指す内容は時代,学派,思想家によって揺れがあるが,両者の対立はひとまず公共的・共同体的価値と個人的価値との対立に置きかえることができよう。しかし中国では,個があってこそ全体が成立しうるという発想をとらず,個が存在しうるのは全体があるからだと考えるので,公志向がきわめて強く,公共的なものへと開かれない個人的諸価値は,おしなべて私=利己主義(エゴイズム)と呼ばれて排斥された。
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〘名〙 (「おおやけ」と「わたくし」との意)
① 朝廷に関する物事と、個人に関する物事。こうし。
※源氏(1001‐14頃)賢木「左の大臣も、おほやけわたくし、引きかへたる世の有様に、もの憂く思して」
② 朝廷と民間。朝野。
※宇津保(970‐999頃)国譲中「かくて物し給はば、おほやけわたくし惜しみ聞ゆれば」
③ 表向きとうちわ。公用の物事と私用の物事。
※枕(10C終)三一「世の中の物がたり、〈略〉おほやけわたくしおぼつかなからず」
〘名〙 (「く」は「公」の呉音) =
こうし(公私)〔色葉字類抄(1177‐81)〕
〘名〙
① おおやけとわたくし。公的なことと私的なこと。また、君公と私。くし。
※続日本紀‐和銅二年(709)一〇月丙申「害二蠧公私一。莫レ過二斯弊一」
※寸鉄録(1606)「公私(コウシ)義理のちがひ、大にかはるぞ」 〔韓非子‐難三〕
② 公田と私田。
※黄葉夕陽邨舎詩‐前編(1812)二・雑詩三首・一「比歳値
二水
一、公私多就
レ荒」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報