日本大百科全書(ニッポニカ) 「双対性」の意味・わかりやすい解説
双対性
そうついせい
数学用語の一つ。たとえば集合におけるド・モルガンの法則
(A∪B)′=A′∩B′,
(A∩B)′=A′∪B′
を考える。前の等式の∪、∩を入れ換えるならば後の等式を得る。この性質によって、集合の和と積についてのあらゆる定理は、∩と∪とを入れ換えることによってもう一つの定理が得られるという仕組みになっている。これを集合の和と積に関する双対性という。この双対性は、さらにさかのぼれば、論理における双対性にたどりつく。すなわちP、Qを命題とするとき
~(P∨Q)⇔~P∧~Q,
~(P∧Q)⇔~P∨~Q
であり、これが集合における双対性に対応する。さらには
~(∃x)P(x)⇔(∀x)~P(x),
~(∀x)P(x)⇔(∃x)~P(x)
という、全称記号∀と存在記号∃との双対性があって、集合においては
が対応している。ここで
は、Λ={1,2,……}のときS1∪S2∪S3……となることを表す。
数学においては基礎にこのような双対性があるために一種独特の整合性、対称性が生じているものと思われる。公理系が対称性をもっている理論ではつねに双対性が成り立つ。たとえば束(そく)の公理では二演算∪、∩に関して(∪、∩は集合の和、積とは限らない)、
a∪b=b∪a
(a∪b)∪c=a∪(b∪c),
(a∩b)∩c=a∩(b∩c)
(a∪b)∩a=a, (a∩b)∪a=a
という双対性があるため、束の定理ではつねに双対性が成り立つ。
射影幾何学は平面と点とに関して双対的な公理系を有するため、点ということばと平面ということばを入れ換えれば双対的な定理が得られる。たとえば二次曲線に関するパスカルの定理はブリアンションの定理と双対である。
[足立恒雄]