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射影幾何学 しゃえいきかがくprojective geometry

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

射影幾何学
しゃえいきかがく
projective geometry

幾何学の一分科であるが,ユークリッド幾何学非ユークリッド幾何学を包括する,より一般的な幾何学としての特徴をもっている。射影幾何学への端緒は,レオナルド・ダ・ビンチの透視画法のなかに見出すことができる。彼は現在でいう射影と切断という操作を,幾何学のなかへ導入し,これを用いてその画法を確立した。射影幾何学は,この射影という操作,すなわち射影変換によって不変な図形性質を研究する幾何学である。たとえば,デザルグの定理パスカルの定理,ブリアンションの定理として知られる図形の性質などは,射影変換によって不変な性質である。アフィン変換によって不変な性質を研究するアフィン幾何学は,射影幾何学を特殊化することによって得られ,またユークリッドの合同変換によって不変な性質を研究するユークリッド幾何学も,この射影幾何学を特殊化することによって得られる。非ユークリッド幾何学も同様に,射影幾何学の特殊化として構成することができる。

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デジタル大辞泉の解説

しゃえい‐きかがく【射影幾何学】

射影という操作を施すことによって図形の性質を研究する幾何学

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百科事典マイペディアの解説

射影幾何学【しゃえいきかがく】

射影により不変に保たれる図形の性質(射影的性質)を研究する幾何学。デザルグパスカルに始まる。射影を特殊化することにより,アフィン幾何学ユークリッド幾何学非ユークリッド幾何学等を導くことができ,古典幾何学中最も基礎的・広範・自由なもの。
→関連項目幾何学双対の原理デザルグプリュッカーポンスレ

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世界大百科事典 第2版の解説

しゃえいきかがく【射影幾何学 projective geometry】

射影という対応によって不変に保たれる図形の性質(射影的性質)を主として研究する幾何学。その起源は,ユークリッド空間の射影的性質を研究した17世紀前半のG.デザルグやB.パスカルにあるが,射影空間上の幾何学として体系的に研究されて完成をみたのは19世紀前半である。19世紀後半にF.クラインにより,ユークリッド幾何学,非ユークリッド幾何学,アフィン幾何学などのいろいろな幾何学が射影幾何学から導きうることが示されるに及んで,射影幾何学は古典幾何学を統合するものとして,その重要性があらためて認識された。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

射影幾何学
しゃえいきかがく
projective geometry

射影対応(射影変換)によって不変な図形の性質を研究する幾何学である。たとえば、「いくつかの点が同一直線(または平面)上にある」は射影的に不変な性質である。一方、のように、交わる2直線g1、g2を点Oから射影し平面πで切断すれば、平行2直線h1、h2が得られるので、「平行」は不変な性質ではない。線分の長さ、角も不変ではないから射影幾何学では意味をもたない。もっとも簡単な射影的不変量は4点および4直線の非調和比で、これらは射影幾何学で基本的役割を果たすものである。射影対応で互いに移りうる図形を射影的合同といい、この合同概念はユークリッド幾何学での普通の合同に対応する役目をする。射影対応を特殊化したアフィン対応によってアフィン幾何学が構成される。ユークリッド幾何学は、アフィン対応をさらに特殊化した対応、すなわち、ユークリッド的合同変換で不変な図形の性質を研究する幾何学とみることができる。非ユークリッド幾何学も同様に構成されるので、射影幾何学はこれらすべてを包含する、より一般的な幾何学である。
 射影幾何学はまた公理論的にもっともすっきりした美しい数学の一つで、ユークリッド幾何学に比べてはるかに少なく簡明な公理から出発し、厳密な論証によって幾何学を展開することができる。とくに射影幾何学では次に述べるように完全な双対(そうつい)性が成り立つことが著しい特徴である。いま、「2点を通る直線はちょうど一つ存在する」という命題を考えてみよう。この命題において、「点」「直線」、「を通る」「の上にある」の置き換えをしてみれば、「2直線の上にある点はちょうど一つ存在する」となる。このような置き換えによって、一つの命題から新しい命題をつくることを双対とよぶ。射影幾何学の公理系はそのどの公理の双対もまたこの公理系のなかに存在している。したがって、一つの命題が真ならばその双対命題は改めて証明しなくても必然的に真となる。ユークリッド幾何学の公理系はこのようにはなっていない。射影幾何学のおこりはルネサンス期の遠近画法であるといわれるが、今日の射影幾何学の端緒を開いたのはフランスの建築技術者デザルグである。パスカルはデザルグの仕事に刺激されて、今日パスカルの定理とよばれる定理をはじめとして円錐(えんすい)曲線に関する多くの射影幾何学的性質を発見した。その後、フランスの工兵士官ポンスレはナポレオンのロシア遠征に参加して捕虜となったが、獄中での研究をもとに双対の原理をみいだした。[立花俊一]

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世界大百科事典内の射影幾何学の言及

【幾何学】より

…解析幾何学に対し,ユークリッド流に図形を直接考察する幾何学を総合幾何学,または純粋幾何学という。
[射影幾何学]
 ルネサンス期のレオナルド・ダ・ビンチやA.デューラーのような芸術家たちによって始められた透視図法(遠近法)は,その後も技術的立場から研究され,17世紀には幾何学のこの方法による研究がG.デザルグやB.パスカルによって始められた。透視図法は空間の図形を1定点から射影して平面上に投影し,この投影図によって原図形を表現するという方法で,まさに写真による表現法である。…

【シュタイナー】より

…1834年ベルリン大学教授に就任,終生この職にとどまった。彼の最大の業績は当時フランスで新興した射影幾何学を継承して,それを総合的方法(数によらず図形そのものを直接考察する研究方法)によって発展させ,射影幾何学の基礎を築き上げたことである。そのほか,彼は初等幾何学における作図問題や最大・最小の問題に関して不滅の業績を残している。…

【デザルグ】より

…透視図法を研究するうち,幾何図形,とくに円錐曲線の性質が射影と切断によって統一的に導けることを発見し,1639年にこれに関する著書を刊行した。これには無限遠点,無限遠直線,極と極線,対合などの概念が述べられていて,この書は射影幾何学の起源とされている。二つの三角形に関する有名なデザルグの定理もこの中で述べられている。…

【パスカル】より

…早く妻を亡くしたエティエンヌは,1631年官を辞して一家でパリに赴き,メルセンヌの主宰する科学アカデミーに出入りするかたわら,子どもの教育に専念する。息子のパスカルは早熟の天才でとくに数学に才覚をあらわし,早くから父とともに科学者の集りに出席したが,16歳のときにデザルグの影響の濃い《円錐曲線試論》を発表(1640)し,射影幾何学における〈パスカルの定理〉を明らかにした。40年再び官についたエティエンヌとともに一家はルーアンに移る。…

※「射影幾何学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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