日本大百科全書(ニッポニカ) 「口唇炎」の意味・わかりやすい解説
口唇炎
こうしんえん
唇紅部(くちびるの赤い部分)が乾燥してかさかさし、ときに浅い亀裂(きれつ)を生ずる疾患で、単独に発症するほか、続発することもある。ビタミンB2やB6の欠乏症でおこる場合、口角炎あるいは舌炎、または両者が同時にみられることが多い。口紅やリップクリームにかぶれておこる場合(接触皮膚炎)もある。口囲(こうい)赤色湿疹(しっしん)はおもに小児に好発し、初めは唾液(だえき)あるいは食物が刺激性に作用して口の周りに乾燥と緊張感がおこり、そのため絶えず舌で上下の唇をなめ回すようになり、その結果、口囲に境界の比較的明確な円形で暗赤色の病変をおこす。同時に口唇炎も生ずる。また、年長者であっても口唇部を気にして、なめる、あるいは手指でむしるなどの習慣的刺激を加えている場合がある。カンジダ症による口唇炎や口角炎もあるので注意する必要がある。治療はそれぞれの原因に基づいて行い、たとえばビタミンB2やB6欠乏症を原因としている場合には、これらのビタミンを投与し、食事療法としては色のついた野菜、とくに緑の野菜を食べさせることが必要である。
[伊崎正勝・伊崎誠一]