接触皮膚炎(読み)せっしょくひふえん(英語表記)contact dermatitis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

接触皮膚炎
せっしょくひふえん
contact dermatitis

ある特定の外的要因が皮膚に接触したことによって生じる湿疹性病変をいう。原因により,1次刺激性とアレルギー性に大別される。前者は強酸,強アルカリのようにだれにでも皮膚炎を起す物質によるもの,後者はある物質に対して特別に過敏な人だけに生じるものである。光エネルギーの介在を要する光接触皮膚炎もあり,これも1次刺激性とアレルギー性に分類される。症状は刺激の強弱,作用時間の長短,作用部位,個体の抵抗,免疫力の強弱などによって左右される。原因物は貼布試験や皮内テストで究明できる。原因物によって化粧品皮膚炎,薬物性皮膚炎,ゴム皮膚炎,クロム皮膚炎,植物皮膚炎などの病名がつけられる。

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百科事典マイペディアの解説

接触皮膚炎【せっしょくひふえん】

俗に〈かぶれ〉とも。外部から直接皮膚に刺激が作用することにより,作用局所に起こる湿疹様の炎症。主要な原因には,ウルシ,ハゼなどの植物毒,アオバアリガタハネカクシなどの動物毒,皮革,塗料,農薬,医薬,化粧品などがある。治療は,原因となる刺激の除去が第一で,その他油脂性軟膏や副腎皮質ホルモン剤の塗布など,急性湿疹に準じる。
→関連項目アレルギー反応かぶれ金属アレルギー主婦湿疹遅延反応パッチテスト皮膚炎皮膚病

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家庭医学館の解説

せっしょくひふえん【接触皮膚炎 Contact Dermatitis】

◎反応のしかたによって分けられる
[どんな病気か]
 からだの外からくるなんらかの化学物質が皮膚について、かゆみや痛みをともなって赤く腫(は)れたり、ぶつぶつ(丘疹(きゅうしん))や水ぶくれができたりする皮膚の病気をいいます。
 刺激物質が皮膚について誰にでもおこる刺激性接触皮膚炎(しげきせいせっしょくひふえん)と、皮膚につくとある一部の人にアレルギーをおこして湿疹になるアレルギー性接触皮膚炎(せいせっしょくひふえん)、また、物質が皮膚について約30分でかゆみとみみずばれ(膨疹(ぼうしん))をおこす接触(せっしょく)じんま疹(しん)、そして光接触皮膚炎(ひかりせっしょくひふえん)として、皮膚についた物質に光があたってはじめて皮膚に反応をおこしてくる光毒性接触皮膚炎(こうどくせいせっしょくひふえん)、光があたるだけでアレルギーをおこしてくる光(ひかり)アレルギー性接触皮膚炎(せいせっしょくひふえん)などがあります。
[原因]
 刺激性接触皮膚炎の原因物質としては、塩酸などの強酸と、水酸化ナトリウムなどの強アルカリがあります。また、脱毛クリームやパーマ液なども、使用方法を誤り、傷んだ皮膚に長い間つけたままでいると刺激性接触皮膚炎をおこします。石けんは脱脂をくり返すことにより、皮膚のバリア(防護)機能の低下した人に刺激性接触皮膚炎をおこすことがあります。
 アレルギー性接触皮膚炎はどんなものによってもおこる可能性があります。よくおこす物質には、コバルト、ニッケル、水銀、金、クロムなどの金属、漆(うるし)、ヘアダイ(髪染め)成分のパラフェニレンジアミン、抗生物質のフラジオマイシンや香料などがあります。
 光毒性接触皮膚炎をおこす有名な物質に、オレンジに含まれるベルガモット油があります。光アレルギー性接触皮膚炎は、貼(は)り薬や鎮痛(ちんつう)効果のある外用剤に含まれる消炎鎮痛薬や、日焼けどめ製品に含まれる紫外線吸収剤などによってまれにおこります。
 接触じんま疹のうち、アレルギーでおこるものには、じんま疹とぜんそくのような息苦しさや血圧低下などのショック症状をおこしてくる場合もあり、緊急処置が必要です。原因には、ゴム手袋などゴム製品に含まれるラテックスたんぱく、魚介類や野菜、医療で使用する消毒薬などが知られています。
[治療]
 医師は、接触皮膚炎がおこった状況を詳しく聞き、皮膚のどの部位にどんな病変があるかをみて原因物質を考え、パッチテストやプリックテストで確認します。治療はそのうえで行なわれます。
 まず、原因物質と接触しないようにします。たとえば化粧品でかぶれている場合は、症状がおさまり、原因となった化粧品がわかり、かわりに使用できる化粧品がパッチテストで確認できるまでは使用をやめておきます。
 症状を抑えるため、部位に応じて副腎皮質ホルモン(ステロイド)外用剤を使い分けます。かゆみや炎症が強い場合は、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服します。重症の場合は、副腎皮質ホルモン薬の数日間の内服が必要な場合もあります。
 接触じんま疹の重症例では、医師の緊急処置と全身管理が必要になることがあります。
[日常生活の注意]
 接触皮膚炎は、原因物質がわかり、それに触れないようにすれば治ります。ところが、ひとたびアレルギーになると、ごく微量の抗原に触れてもかぶれを再発するようになります。抗原はさまざまなものに含まれているため、抗原とよく似た構造の物質に触れたり、体内に入れたりすると、アレルギーをおこすこと(交差反応(こうさはんのう))があります。
 日本でよくみられる接触抗原について、その含まれているものと注意点をあげておきます。
●重金属類
 コバルトは装飾品を含むニッケルメッキ製品や歯科金属に含まれています。ニッケルも同じくニッケルメッキ製品、硬貨、歯科金属、ステンレスなどに含まれています。水銀は水銀体温計や赤チン(マーキュロクロム液)、ワクチンの防腐剤などに含まれています。日本人の約10%は以上の3つの金属に接触アレルギーがあると考えられています。
●金
 イオンになりにくい物質であるため、かぶれをおこさないと考えられていました。ところが、金製のピアスが流行して、耳たぶのピアス孔(こう)がただれたり、硬結(こうけつ)(かたまり)ができる女性が増えてきました。
 約7%の人が接触アレルギーをおこすことがわかっています。金ピアスをする20歳代の女性と、歯科金属として金冠を入れている50歳代の女性に多くみられます。金冠から溶けだした金イオンは、口腔(こうくう)内に炎症をおこしたり、手足の裏にぶつぶつや膿(うみ)をもった病変をおこしたり、からだに色素沈着をおこすことがあるのです。
●漆(うるし)
 ヤマウルシ、ハゼノキ、ツタウルシなどのウルシ科の植物はいずれもアレルギー抗原となり、強い感作性(アレルギー反応をおこす力)があります。マンゴーや銀杏(ぎんなん)とよく似た抗原です。
[予防]
 刺激性接触皮膚炎は、化学物質や医薬部外品などの使用説明書や注意書きをよく読むことで予防できます。アレルギー性接触皮膚炎は原因物質を確認し、よく似た物質も注意する必要がありますから、専門医の指導を受けることをお勧めします。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

接触皮膚炎
せっしょくひふえん

体外の刺激物が皮膚に接触して生ずる湿疹(しっしん)性病変で、俗称かぶれ。刺激物の作用形式、すなわちアレルギー性の機序によるかよらないかでアレルギー性接触皮膚炎と一次性刺激性皮膚炎に大別される。[伊崎正勝・伊崎誠一]

アレルギー性接触皮膚炎

アレルギーによって生ずる湿疹性病変で、ある刺激物に対して皮膚が感作(かんさ)されて敏感になっている特定の人だけにおこり、湿疹性接触皮膚炎ともいう。皮膚が感作されるのは刺激物に抗原性があるためで、この接触物のことをとくに接触源(抗原、アレルゲン)とよぶ。接触源の接触によって皮膚が感作され、感作成立後に同じ接触源が皮膚に再接触すると、その接触部位に初めて湿疹性病変がおこる。感作されるまでの期間を潜伏期間といい、一般に5日以上とされている。また、再接触後発病までの時間は24~48時間が普通である。
 まず接触源の接触部位に限局して紅斑(こうはん)が生じ、多少の浮腫(ふしゅ)(むくみ)が加わり、ついで丘疹(きゅうしん)(ぶつぶつ)、小水疱(すいほう)、膿疱(のうほう)、びらん、痂皮(かひ)(かさぶた)が順次生じ、治癒に向かうと痂皮が脱落し、鱗屑(りんせつ)(細かい角質片)が形成され、やがて瘢痕(はんこん)を残すことなく完全に治癒する。自覚的には普通、激しいかゆみを訴える。通常、湿疹性病変の境界は不明確である。病変部のかぶれは単に赤くなる(紅斑)だけのこともあり、小水疱がたくさんできることもある。この炎症程度の違いは、患者の皮膚の過敏状態の程度の高低、および接触源の濃度や皮膚に対する接触時間の差異による。なお、外傷、熱傷(やけど)、潰瘍(かいよう)などがあると、皮膚は接触源によって感作されやすくなる。
 主要な刺激物には次のようなものがある。植物性のものとしては、ウルシ、ツタウルシ、ハゼノキをはじめ、イチョウ(ぎんなん)、イチジク、キク、サクラソウなどがあり、動物性のものには、チョウやガのほか、羊毛のような動物の毛などがある。そのほか、外用医薬品、化粧品、香料、パーマ溶液、洗剤類、しらが染め、薬品類(アクリジン系化合物、サルファ剤、ペニシリンなどの抗生物質など)、農薬、染料、塗料、機械油、揮発油、モルタルなどの化学製品、ゴム手袋、ゴム靴、コンドームなどのゴム製品、ネックレスやイヤリングなどの貴金属およびニッケル・クロム製品(腕時計など)、皮革製品(帽子、ベルト、時計バンド、靴)などがある。[伊崎正勝・伊崎誠一]

一次性刺激性皮膚炎

アレルギー性の機序によらず、刺激物の直接作用によって生ずる湿疹性病変で、刺激物が皮膚に接触すると、だれもが例外なくかぶれをおこす。手指、手関節部、前腕が好発部位で、ほとんど発赤だけのこともあるが、高度の腫脹(しゅちょう)(腫(は)れ)を伴ったり、大小の水疱、びらん、痂皮を形成し、さらに潰瘍や壊死(えし)をおこすことがある。また、鱗屑、亀裂(きれつ)(皮膚の割れ目)などの乾燥性変化を主徴とすることもあり、慢性に経過して苔癬(たいせん)化を示すこともある。こうした症状の違いは、刺激物の性質、濃度、接触時間または刺激物にさらされた時間によって定まる。
 刺激物としては、石炭酸や硝酸銀の高濃度液、からし、ニンニクなどのように、1回の接触だけでかぶれるものもあり、長時間にわたる接触後に初めてかぶれをおこすものもある。産業用の洗浄剤、清浄剤、溶剤、酸やアルカリ剤、セメント、機械油や潤滑油、ガソリン、ディーゼル油、溶鉱炉用油などがある。さらに家庭では主婦が使用するせっけん類、洗剤類、磨き粉類、熱湯、つや出しワックス類、ガラス磨き類などがある。これらによるかぶれは、表皮が反復性に物理化学的に損傷されることも誘因となり、職業性皮膚炎とよばれることもある。主婦湿疹もその一型と考えることができる。また高度の一次性刺激性皮膚炎は化学熱傷と同じことになる。工業用洗浄剤であるフロン酸による皮膚炎はきわめて重症である。[伊崎正勝・伊崎誠一]

治療

まず原因の除去がたいせつである。その後、症状の軽い場合は、副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤含有クリームまたは軟膏(なんこう)の塗布だけですぐ治る。症状の重い場合は、さらに全身療法として抗ヒスタミン剤を内服する必要がある。また、副腎皮質ホルモン剤、抗ヒスタミン剤の併用もときには必要である。[伊崎正勝・伊崎誠一]
『本田光芳監修、矢島純編『薬疹と接触皮膚炎――目でみる薬の副作用』(1998・薬業時報社) ▽西岡清編『やさしい皮膚免疫学――免疫学から見た皮膚疾患』(2002・医薬ジャーナル社)』

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内科学 第10版の解説

接触皮膚炎(その他のアレルギー性疾患)

定義・概念
 接触皮膚炎とは外来性の刺激物質や抗原(ハプテン)が皮膚に接触することによって発症する湿疹性の炎症反応を指す(高山ら,2009).
分類
 接触皮膚炎は刺激性とアレルギー性に大別される.さらに光線が関与したタイプを加えて,①刺激性接触皮膚炎,②アレルギー性接触皮膚炎,③光接触皮膚炎(光毒性接触皮膚炎,光アレルギー性接触皮膚炎),④全身性接触皮膚炎・接触皮膚炎症候群に分類される.
病態
1)刺激性接触皮膚炎:
一定の刺激閾値をこえれば初回接触でもまた誰にでも発症しうるもので(たとえば灯油皮膚炎),表皮細胞からライソゾーム酵素,サイトカインなどが放出されて湿疹反応が起きる.
2)アレルギー性接触皮膚炎:
免疫学的に感作成立後,同物質に再接触した場合に発症するもので(たとえば金属皮膚炎),Ⅳ型アレルギー(遅延型反応)機序が関与している.
3)光接触皮膚炎:
接触源が付着しこれに光線照射が加わった部位に起きる湿疹反応.光毒性皮膚炎と光アレルギー性接触皮膚炎に大別され,前者は刺激性皮膚炎に,後者はアレルギー性接触皮膚炎にそれぞれ対応する.
4)全身性接触皮膚炎・接触皮膚炎症候群:
接触感作の成立後に同一抗原が経口・吸入・注射などで体内に侵入することによって,全身に皮膚炎を生じたものを全身性接触皮膚炎とよぶ.また,接触感作成立後,同一抗原が繰り返し経皮的に接触し,皮膚病変が接触範囲をこえて全身に出現する場合を接触皮膚炎症候群とよぶ.
臨床症状
 接触源が作用した部位に一致した比較的境界明瞭な急性の,あるいは慢性の湿疹病変が認められる.原因物質接触部位は発赤・腫脹が著明で,漿液性丘疹,小水疱,湿潤,びらんからなる急性湿疹病変となり,激しいかゆみを伴う.図10-34-3は草(ヤエムグラ)による接触皮膚炎の臨床像で,浮腫性紅斑と小水疱を多発して認める.原因物質の接触刺激が繰り返されると,皮膚の肥厚を伴う苔癬化病変となって慢性湿疹の臨床像を呈する.光接触皮膚炎では,光線照射を受ける部位に限局して日焼け様症状あるいは湿疹様症状をきたす.
診断
 詳細な問診と皮疹の部位,分布の特徴から原因物質を想定し,パッチテストにより確定診断を行う.接触皮膚炎発生部位に対応する主な接触源の例として,頭では育毛剤・毛染料,顔では化粧品・メガネのつる,体幹では衣料品・装身具,上肢では時計・植物,下肢では衣料品・ポケットの中味などがあげられる.また,頻度の高いアレルギー性接触皮膚炎の原因物質として,クロム・ニッケルなどの金属類,うるし・サクラソウなどの植物,毛染料として使われるパラフェニレンジアミン,抗真菌薬・非ステロイド系抗炎症外用薬などの医薬品,パラベンなどの防腐剤,ゴムなどがあげられる.
治療
 接触皮膚炎の炎症症状に対してはステロイド外用薬の塗布,かゆみに対しては抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬の内服などを行う.また,パッチテストにより原因物質が明らかにされたら,患者にその名称,含まれている物質・製品を教示し,交差するアレルゲンも説明し,これらに接触しないよう注意させることが重要である.[佐伯秀久]
■文献
高山かおる,横関博雄,他:接触皮膚炎診療ガイドライン.日皮会誌,119: 1757-1793, 2009.

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世界大百科事典内の接触皮膚炎の言及

【アトピー性皮膚炎】より

…語源はギリシア語で〈奇妙な皮膚炎〉を意味する。1923年にA.コカが提唱した〈アトピー〉性の素因による皮膚炎という意味で名づけられた。典型的な経過をとる場合,まず乳児期に顔面,頭部にかゆみの強い赤い発疹が現れ,かきこわすと汁が出てくる。やがてこのかゆい発疹は全身の皮膚に広がり,悪化と改善の波をくりかえすようになる。改善したときには,皮膚には赤みはなくなり,梨の肌のようなぶつぶつが背や胸にみられる程度になる。…

【おむつかぶれ】より

…おむつを使用している者,おもに乳児のおむつの部位に生じる接触皮膚炎。尿中の尿素が糞便中の細菌の尿素分解酵素によってアンモニアに変化して,かぶれの原因になるといわれる。…

【湿疹】より

…したがって,急性湿疹,慢性湿疹には,本来の急性,慢性の意味はまったくなく,より正しくいうなら多形性湿疹,表皮肥厚性湿疹というほうが当たっている。 しかし,先にも述べたように湿疹は病名ではなく症候名であって,しだいに接触皮膚炎contact dermatitisという原理指示的で合理的な病名に代わりつつあるため,〇〇湿疹というようなこれらの名称は歴史的なものとして理解しておくほうがよいであろう。そのような,一見不合理だが伝承されつづけている名称には,このほかにも蕁麻疹(じんましん),狼瘡(ろうそう)などがある。…

※「接触皮膚炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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