カンジダ症(読み)かんじだしょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カンジダ症」の意味・わかりやすい解説

カンジダ症
かんじだしょう

真菌(カビ)の一種であるカンジダ・アルビカンスCandida albicansなどによっておこされる病気。モニリア症ともいう。粘膜、皮膚、肺に多くみられるほか、白血病や癌(がん)などの重篤疾患の末期、あるいはステロイドホルモン剤の使用に際して、全身の諸臓器に広がって病気をおこす。菌は正常な人の消化管や腟(ちつ)にも発育している。

 粘膜カンジダ症には、口内にできた乳白色斑(はん)をふき取ると浅いびらんがみられる鵞口瘡(がこうそう)、口のわきに亀裂(きれつ)ができて口を開くと痛む口角炎、妊婦や糖尿病患者の外陰部や腟に湿疹(しっしん)様皮疹、びらん、まれに潰瘍(かいよう)をつくる外陰腟炎などがある。皮膚カンジダ症には、指のまたがただれる指間びらん症、わきの下や乳房の下に発疹やびらんができる間擦疹おむつかぶれや水仕事などのあとに湿疹状あるいは紅斑状の病変がみられる皮膚酵母菌症、肛門(こうもん)周囲から会陰(えいん)部にかけてかゆくなる肛囲湿疹、爪(つめ)が変色してぼろぼろになり周囲が赤くはれて痛む爪炎(そうえん)および爪囲炎などがある。内臓カンジダ症は、重篤疾患の末期に併発し、肺によくみられ、気管支肺炎の症状を示す。とくに、高カロリー輸液用に静脈内へカテーテルを留置している患者では、敗血症をおこしやすい。

[福嶋孝吉]

治療

粘膜カンジダ症には抗真菌剤(アムホテリシンBなど)の液剤、軟膏(なんこう)、トローチなどを局所的に用いるが、内服を併用する場合もある。腟カンジダ症にはピマリシンなどの坐薬(ざやく)がある。皮膚カンジダ症には抗真菌剤の液剤、軟膏、粉末剤がよい。内臓カンジダ症にはアムホテリシンBが有効で、静脈内に点滴注射される。

[福嶋孝吉]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カンジダ症」の意味・わかりやすい解説

カンジダ症
カンジダしょう
candidiasis

モニリア症ともいう。真菌の一種のカンジダ属,特にカンジダ・アルビカンス Candida albicansの感染で起る病気の総称。おもに口腔,皮膚,爪,気管支,肺,腟などに病変を生じ,敗血症,心内膜炎を招くこともある。健康人に常在している菌であるが,免疫抵抗力が衰えたときなどに病原性を発揮し,いわゆる日和見 (ひよりみ) 感染症を起す。各種抗生物質の多用で細菌が死滅し,代りに真菌類が増殖するという菌交代現象で誘発されることが多い。アムホテリシンBの注射などを行うほか,局所にゲンチアナバイオレット溶液,トリコマイシン軟膏などを用いる。

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