右胸心
うきょうしん
Dextrocardia
(子どもの病気)
文字どおり、心臓が体の右側にある状態です。心臓だけでなく全部の内臓が左右逆になっている全内臓逆位は、5000人に1人程度認められるといわれています。そのなかで、先天性心疾患を合併するのは5%程度です。
ほかに、心臓だけが左右逆になっているものや、無脾(多脾)症候群に伴うもの、そして右肺の低形成などで心臓が右側に極端に寄ってしまったものなどがあります。
原因は不明です。全内臓逆位については、いくつかの遺伝子異常との関連が知られています。
通常、右胸心のみでは症状はなく、合併する心奇形によります。
乳児健診、学校検診や、偶然の診察の機会に聴診で気づかれ、胸部X線検査で診断します。診断されたら合併奇形がないかどうか、心エコー(超音波)でチェックします。
合併奇形のない単純な右胸心ならば、血行動態は正常なので治療の必要はありません。
心臓に関しては心エコーなどで、合併奇形の有無のチェックが必要です。全内臓逆位の場合、医療機関を受診する際には必ず伝えるようにしないと、診断ミスの原因となる可能性があります。
長谷川 聡
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
右胸心(その他の先天性心疾患)
(12)右胸心(dextrocardia)
右胸心はどのような理由でも,心臓が主として胸腔の右側にあるものを指す.後天的に右肺摘出を行い二次性の移動で生じたものも含まれる.先天的には内臓正位(situs solitus),内臓逆位(situs inversus),内臓不定位(situs ambigus)のいずれの場合にも生じえるが,内臓逆位の場合には構造的心疾患はまれである.内臓正位の場合には修正大血管転位が多いとされている.内臓不定位に関しては無脾多脾症候群を参照されたい.【⇨5-8-10)-(16)】[山田 修]
■文献
Fyler DC, Buckley LP, et al: Report of the New England Regional Infant Cardiac Program. Pediatrics, 65(Suppl): 376-461, 1980.
Rose V, Izukawa T, et al: Syndromes of asplenia and polysplenia: A review of cardiac and non-cardiac malformations in 60 cases with special reference to diagnosis and prognosis. Br Heart J, 37: 840-852, 1975.
Ryan AK, Blumberg B, et al: Pitx2 determines left-right asymmetry of internal organs in vertebrates. Nature, 394: 545-551, 1998. 7)~10)全体
Mitchell ME, Sander TL, et al: The Molecular Basis of Congenital Heart Disease. Semin Thorac Cardiovasc Surg, 19: 228-237, 2007.
Anderson RH, Baker EJ, et al: Pediatric Cardiology,3rd ed, Churchil Livingston/Elsevier, Philadelphia, 2009.
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
右胸心
うきょうしん
心臓が通常と反対側、すなわち右胸腔(こう)にあるものをいう。これは先天的なものであり、心臓から出ている大動脈や肺動脈も通常とは左右が逆の関係になっている。他の諸臓器の左右も逆関係にある場合、内臓逆位と称している。このような全身的な内臓逆位の場合、日常生活上問題となることは少なく、健康診断などのときに偶然に発見されるものがほとんどである。なお、内臓逆位を伴わない右胸心(孤立性右胸心)もあり、これは重い心奇形に伴うことが多い。一方、後天的原因、たとえば結核性胸膜炎や肺気腫(きしゅ)により、縦隔の機械的な右側偏位に伴うような心臓の右方偏位は、一般的には右胸心とはよばない。
[阿部 裕]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
世界大百科事典(旧版)内の右胸心の言及
【先天性心疾患】より
…それらはさまざまな立場から分類されているが,従来よく行われているのは,[チアノーゼ]を示す群(チアノーゼ性先天性心疾患)と示さない群(非チアノーゼ性先天性心疾患)に分けるものである。前者にはファロー四徴症,完全大血管転位,総肺静脈還流異常,三尖弁閉鎖,右胸心などがあり,後者には心室中隔欠損,心房中隔欠損,心内膜床欠損,動脈管開存,肺動脈狭窄,大動脈狭窄,大動脈縮窄などが含まれる。ただしチアノーゼの有無は決定的な違いではなく,前者に分類される疾患においても,ほとんどチアノーゼのみられない例もあり,また後者に分類される心室中隔欠損などにおいても病気が進行した状態においてはチアノーゼが現れることもある。…
※「右胸心」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」