音波のエネルギーが他の形のエネルギーに非可逆的に転換される現象。たとえば、空気中を伝搬する音波は、そのエネルギーの一部が空気の粘性のため熱に、また酸素分子の振動のため振動エネルギーに転換される。ただし、この逆の現象は生じない。これは空気による吸音の例である。室内で音波が壁などに入射したとき、そのエネルギーの一部は反射され、一部は壁の内部で熱となって吸収され、残りは室外に音として出ていく(透過音)。室内の音だけを考える場合には、壁の内部で吸収されるものと透過するものとを区別する必要はなく、むしろ両者の和を吸音と考えるほうが便利である。この吸音エネルギーの入射エネルギーに対する比を吸音率という。また大きな吸音率をもつ材料は吸音材とよばれる。吸音材はその名称のためか、しばしば遮音材として誤用されるが、定義から明らかなように吸音は透過音を含むので、遮音用に用いる場合、注意が必要である。
[古江嘉弘]
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