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音響設計 おんきょうせっけいacoustical design

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

音響設計
おんきょうせっけい
acoustical design

建築空間に最適の響状態を与えるために,音響の立場から行う空間設計。音響設計の基準としては,次のような項目がある。 (1) 空間の形状を図面から幾何学的に,または模型実験で音が特定の点に集中しないようにし,さらに反射音が適当に分布するように決める。 (2) 空間の目的に応じ,適当な反射材料と吸音材料を使い,残響特性を良好にする。 (3) 壁,床,天井などの遮音性能と室内の吸音性能とにより,その空間の騒音度を小さくする。特に換気ダクトの音に注意する。これらの項目によって音響設計を行なって完成した空間に対して,残響時間の周波数特性,壁面の反射性,騒音度および音の明瞭度分布などを測定して,音響設計の効果を検討する。

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世界大百科事典 第2版の解説

おんきょうせっけい【音響設計】

必要とされる音響状態を作り出すための手法。その範囲は多岐にわたるが,建築との関連でこの問題を扱う建築音響設計(建築音響)がその中心であり,以下でもこれについて解説する。建築音響の内容としては,ホールなどの室内の音響効果をよくすることと,建物の騒音防止性能(防音性能)を高めることの二つに大別される。
室内音響設計
 室内音響特性が重視される建物としては,コンサートホール,劇場,会議室,教室,体育館などがあげられる。

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

音響設計
おんきょうせっけい

音響学的建築設計のこと。すなわち、建築物を計画、設計するに際して、外部騒音および隣室からの騒音が十分小さくなるよう建物配置や壁、窓などの設計をしたり、さらに室内で会話が円滑に行われ、講演を明瞭(めいりょう)に聴き取ることができ、あるいは音楽を心地よく鑑賞できる状態となるよう設計することをいう。なおこのような室内の音響あるいは騒音、振動の制御について研究する学問は建築音響学とよばれている。
 ギリシアの野外劇場などでも、観客によく音が聞こえるよう「音響設計」された形跡があるが、科学的音響設計は、19世紀末、セービンWallace Clement Sabine(1868―1919)がアメリカのハーバード大学の講堂の音響改修を行う際、残響時間の重要性およびその予測公式を発見し(1895)、さらにそれを用いてボストン・シンフォニー・ホール(1900完成)の音響設計を行ったことに始まる。このコンサート・ホールは現在でも世界屈指の名ホールとされている。
 本来音響設計は、どのような建物に対してもなされるべきであるが、現実には音楽堂、劇場、公会堂、講堂などのオーディトリアムや放送用スタジオなどがおもな対象とされている。[古江嘉弘]

室内音響の要件

室内で音を聴く場合、音声であるか音楽であるかによって要求される音響条件は異なる。したがって、たとえば音楽専用とか演劇専用というように使用目的が限定されるほど、よい音響状態が得られやすいといえるが、公会堂などのように多目的に利用されることの多いホールは容易ではない。
 室内でよい音響状態を得るためには、次の要件を満たさなければならない。
(1)静穏で、じゃまな騒音がないこと。
(2)エコーecho(反響)、フラッタエコーflutter echoes(鳴き竜)、ブーミングbooming(ぶんぶんと響く現象)、デッドスポットdead spots(非常に音の弱くなる場所)などの音響障害がなく、座席の違いによる音の聞こえ方に差がないこと。
(3)音楽を聴く場合、美しく響くこと、また話声を聴く場合、明瞭に聴き取れること。
 これらはそれぞれ以下の騒音防止、室形状、残響の設計と対応させることができる。[古江嘉弘]

騒音防止設計

室内を静穏に保つことは、音響設計以前の問題といえるほどたいせつなことである。建物を計画する場合、まず交通騒音、工場騒音などの少ない敷地を選ぶこと、騒音源からできるだけ遠くなるよう配置することが望ましい。次に建物内各室の間取りをくふうする。つまり、会議室とか講義室など、とくに静かであることが必要な室はできるだけ騒音源側に直面しないように計画する。もちろん建物内の騒音源となる機械室などに隣接させないこともたいせつである。
 このように計画したのち、各室の用途に応じて、もつべき遮音性能を定め、それを満たすよう壁や窓の材質、構造などを決定する。その際、建築材料資料集などで、材料固有の遮音性能(透過損失)を参照するが、施工の状態により所定の遮音性能が得られないこともあり、またとくに異なる材料の継ぎ目などにできやすいすきまや扉などのすきまは、たとえわずかなものであっても遮音度に大きく影響するので注意しなければならない。
 また建物内の機械とか給排水管などの振動、あるいは階上を歩くときなどに発生する衝撃振動が床、柱、梁(はり)などの構造体を伝搬してふたたび室内に放射される騒音は固体伝搬騒音とよばれ、鉄筋コンクリート造の建物などでは大きな問題となることがある。これを避けるため防振ゴムや緩衝材が使用されている。しかし放送スタジオのように非常に厳しい音響条件が要求される場合には、室全体を建物構造体と振動絶縁する、いわゆる「浮き構造」としなければならない。
 以上の室内騒音防止対策は設計計画の時点で詳細に検討しておくことが肝要であり、また結局経済的でもある。[古江嘉弘]

室形状の設計

音源から出た音には、直接耳に到達するもの(直接音)と壁で反射したのち到達するもの(反射音)とがある。直接音に続く反射音の時間的、空間的到来の仕方は室の形状によって定まる。直接音と反射音あるいは反射音と反射音の時間間隔が長すぎると(50ミリ秒以上)音が分離して聞こえ(エコー)、また壁面が平行に向かい合っているとフラッタエコーが現れやすい。したがって室の形状はなるべく不整形なものとし、壁面に凹凸をつけ、いろいろな方向に反射(拡散)させるのがよい。公会堂のように大きな室ほど音の拡散が必要である。なお凹曲面をもつ室は音の焦点ができやすく、またデッドスポットをつくりやすいので、なるべく避けたほうがよい。
 会議室のような比較的小さく、直方体の室ではブーミング現象が生じやすい。これを避けるため、室の縦、横、高さの寸法比を、たとえば4:2:1のような簡単な整数比とならないように選び(たとえば+1:2:-1など)、さらに天井や壁を吸音性にするとよい。[古江嘉弘]

残響設計

室内で音を急に止めても、その音はすぐには消えないで、徐々に弱まっていく。この現象を残響とよぶ。これは各壁面で反射された音が合成されたものであるが、個々の反射音が明瞭に識別されて聞こえる反響(エコー)とは区別して扱われる。
 残響現象の長さを表すため残響時間という術語が用いられる。これは、室内に一定の強さの音を出し続けたのち、急に音を止め、その音の強さが初めの100万分の1にまで(または60デシベルだけ)小さくなるまでの時間であると定義されている。
 残響時間は室内の音響の良否を決めるたいせつな要素であり、会話、講演、演劇など主として音声を明瞭に聴き取るためには短めのほうがよいし、一方、音楽を聴く場合には音量を豊かにし、音に「つや」を生ずるので多少長めが望ましい。また室容積が大きいほど長いほうがよい。室の用途に応じた最適残響時間と室容積との関係がのように提案されている。この図は500ヘルツの音に対するものであるが、他の周波数の音に対してもこれと同程度に保てばよい。ただ音楽などに対しては低音でいくぶん長めがよいとされている。
 音が壁などに当たると、そのエネルギーの一部は壁の中で熱となって吸収され、また一部は通り抜け(透過)、残りが室内側に反射される。この吸収プラス透過エネルギーの入射エネルギーに対する比率は吸音率とよばれる。吸音率は材料によって、また音の周波数によっても異なる。各種の代表的な建築内装材について測定された吸音率はデータブックなどで知ることができる。内装材の面積とその吸音率との積を吸音力とよび、椅子(いす)や人物などのように面積が確定しにくいものに対しては吸音力のみが測定されている。
 室が最適残響時間となるよう設計するためには、「残響時間は室容積に比例し、室内全吸音力に反比例する」というセービンの公式に従って内装材を選べばよい。ただ、あらかじめすべての内装材に対する吸音力について詳細にはわからない場合もあるし、施工上の手違いもありうるため、完成後、残響時間を実測し、必要に応じて改修することが望ましい。
 どんな音が最良であるのかは、最終的には人間の主観的判断によらねばならない。この主観評価に関してはまだ解明されねばならないことが多く残されており、建築音響学の分野における興味ある研究テーマの一つとなっている。[古江嘉弘]
『日本音響材料協会編『建築音響工学ハンドブック』(1963・技報堂出版) ▽日本音響材料協会編『騒音・振動対策ハンドブック』(1982・技報堂出版)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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