呉船録(読み)ごせんろく(その他表記)Wu-chuan-lu

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「呉船録」の意味・わかりやすい解説

呉船録
ごせんろく
Wu-chuan-lu

中国,南宋随筆范成大 (はんせいだい) の著。四川総督の地位を辞した著者が,淳煕4 (1177) 年5月に成都から揚子江南京まで下り,さらに 10月に故郷蘇州に帰り着くまでの船旅を日記の形で記したもの。途中での出来事,風物が詳細かつ淡々とした筆致で述べられ,陸游の『入蜀記』と並んで中国紀行文学の代表作の一つとなっている。同じ著者の他の旅行記『攬轡 (らんぴ) 録』『驂鸞 (さんらん) 録』と合せて,「石湖三録」と称される。

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世界大百科事典(旧版)内の呉船録の言及

【山水遊記】より

…美しい風景を描写する文章は,北魏の酈道元(れきどうげん)の地理書《水経注》にすでに見られるが,唐の柳宗元が華南に流謫(るたく)され,北方と異なる山水の美を自らの感慨をまじえて記述した《永州八記》が模範となり,その後,親しく遊覧した山水を記述する文学が多く作られた。宋代では,范成大《呉船録》,陸游《入蜀記》のように紀行文が単に旅程の記録にとどまらず,風景描写を含み,遊記の性格を持つものが生まれた。全国各地を遍歴したのでは,明の徐宏祖《徐霞客遊記》が有名である。…

【范成大】より

…陸游,楊万里と共に南宋の三大家の一人であり,従来の江西詩派の硬直した詩風を一掃した。紀行文《攬轡録(らんひろく)》《驂鸞録(さんらんろく)》《呉船録》は,陸游《入蜀記》と並んで名高い。詩集は《范石湖詩集》34巻が現存。…

※「呉船録」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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