中国,南宋の政治家,文学者。字は致能,号は石湖。江蘇省呉県の人。紹興24年(1154)の進士に合格。のち広西や四川の軍政長官を歴任し,参知政事(副宰相)にのぼった。初期の地方官時代,義役法を創設するなど,総じて良心的実務官僚に属する。詩人としては,農村の四季の風物をうたった晩年の連作〈四時田園雑興〉が有名で,一般に陶淵明以来の伝統を受けた田園詩人とみなされている。しかし,農民の生態を鋭く観察し,社会制度の矛盾をついた若年の作品や,使命を帯び当時の敵国金へ往復した体験をうたった壮年期の作品は,単なる田園詩人以上の視野の広がりを示唆する。陸游,楊万里と共に南宋の三大家の一人であり,従来の江西詩派の硬直した詩風を一掃した。紀行文《攬轡録(らんひろく)》《驂鸞録(さんらんろく)》《呉船録》は,陸游《入蜀記》と並んで名高い。詩集は《范石湖詩集》34巻が現存。日本でも江戸時代後期,山本北山らにより宋詩が評価され,彼の作品も喧伝された。
執筆者:岡本 不二明
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中国、南宋(そう)の詩人。字(あざな)は致能(ちのう)(至能(しのう)ともいう)、号は石湖居士(せっここじ)。呉郡(ごぐん)(江蘇(こうそ)省蘇州市)の人。1154年(紹興24)の進士。孝宗の信任を受け、官は参知政事(副宰相)に至った。陸游(りくゆう)と親交をもち、南宋四大家の1人に数えられている。蘇州郊外の石湖に別荘があり、晩年はそこで悠々自適しながら、農村に題材をとったスケッチ風の清新な詩を多くつくった。だが一方に金国に使いした途中の愛国の熱情に満ちた連作もあり、単なる田園詩人には終わっていない。著に『石湖居士詩集』34巻がある。
[横山伊勢雄]
『今関天彭・辛島驍著『漢詩大系16 宋詩選』(1966・集英社)』▽『入谷仙介著『新訂中国古典選 宋詩選』(1967・朝日新聞社)』
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