咬耗症(読み)こうもうしょう(その他表記)Attrition

六訂版 家庭医学大全科 「咬耗症」の解説

咬耗症
こうもうしょう
Attrition
(歯と歯肉の病気)

どんな病気か

 食べる時や無意識に起こる歯ぎしりなどで、長年にわたり上下の歯が噛み合うことにより、エナメル質象牙質(ぞうげしつ)がすり減って欠損となったものをいいます。磨耗症(まもうしょう)との違いは、自分の歯同士がこすりあって生じることです。

原因は何か

 歯が互いにこすりあってできるので、誰にでも自然に咬耗はできるものです。ただし、一般的には非常に軽度でほとんど目立ちません。ところが、非常に強く噛む癖のある場合、硬い食べ物を好んで食べている場合、歯ぎしりをする場合、噛みたばこの習慣がある場合などは著明な咬耗が生じます。

症状の現れ方

 咬耗は徐々に生じ、加齢とともに強く現れることが多いですが、歯ぎしりを強くする場合は若い時から強い咬耗がみられる場合があります。一般に、前歯は先端部分(切縁)、臼歯(きゅうし)咬合面に現れます。

 1~2本という少数のみに生じるよりは、口のなかの歯全体あるいは左右片側全体の歯に生じることが多くみられます。咬耗した面は平滑で、みがいたようになっていることが多いのですが、象牙質まで進展すると次第に褐色となり、くぼみができてきます。

検査と診断

 生じた部位とそのでき方を視診することにより容易に診断できます。できる部位が異なるので磨耗との区別は容易です。象牙質まで進展してくぼみができた場合や色が変わっている場合は、むし歯との区別が必要になります。

治療の方法

 歯ぎしりが原因で咬耗が生じた場合は、ナイトガードというマウスピース様のものを就寝時に口腔内に入れて歯ぎしりを防止する方法をとります。それ以外の理由で咬耗が生じている場合は原因を取り除く努力をしてもらうのですが、咬耗がエナメル質内にとどまっているかぎりは、また自覚症状がとくにない場合は、治療を行わず様子をみることがほとんどです。

 咬耗により歯が(とが)って歯肉や頬粘膜を傷つける場合は、その部分を研磨して丸くします。

病気に気づいたらどうする

 咬耗としての自覚症状はほとんどないので、自分で気がつくことはまれです。歯ぎしりをする、歯が強く当たって痛い、舌が触ると歯が尖っていて痛い、といった咬耗を引き起こす原因、あるいは咬耗により二次的に引き起こされる症状により、歯科医療機関を訪れることのほうが多いと思います。この場合は、歯科医により適切な治療を受けることになります。

荒木 孝二

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「咬耗症」の解説

こうもうしょう【咬耗症 Attrition】

[どんな病気か]
 歯と歯がかみ合い、その摩擦(まさつ)により、歯質(ししつ)の一部が消耗することを咬耗といいます。
 歯は食物のかたさ、咬合力(こうごうりょく)、歯質の石灰化の程度などに影響を受け、抵抗性の弱い歯が咬耗をおこします。
[症状]
 咬耗は長い期間を経ておこるので、一般に自覚症状は少ないのですが、象牙質(ぞうげしつ)が露出すると知覚過敏症をおこすこともあります。
 エナメル質だけのもの、象牙質の露出をきたしているもの、歯冠(しかん)のほとんどが失われているものなどに分けられ、ふつう象牙質が黄褐色に着色されることが多いのも特徴の1つです。
[治療]
 通常症状がなければそのままにして経過をみますが、症状の程度によっては摩耗症(まもうしょう)(磨耗症)と同様の処置を、また咬耗が大きいときには抜髄(ばつずい)に至る場合もあります。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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