病気または疾病、疾患とは、健康で正常な生活を営んでいる者が、正常な範囲を外れて、機能的、形態的、あるいは精神的な異常を示し、病的状態となることを意味しているが、この際の異常には、自ら感ずる、すなわち自覚的の場合と、医師を含めた他人が認識する他覚的の場合とがある。病気になった者が訴える自覚的な異常の感じを一般に自覚症状あるいは愁訴とよんでいる。これに対し、医師の診察、あるいは検査によって確かめられる異常は他覚症状あるいは所見という。医師が診察に際して、患者の病気の始まり、経過などを記録する現病歴は診察の第一歩としてきわめて重要なもので、その最初に、自覚症状の主要なもの、すなわち主訴を記載するのが常である。さらに自覚症状については、その性質、部位、程度、およびそれと関連する事柄などを細かく患者に尋ねて、病気の発病状態と現在に至るまでの経過を把握することが必要で、これを打診、聴診などに対して問診とよんでいる。自覚症状は多種多様で、臓器および系統における疾患には、それぞれ特有の症状がある。たとえば、消化器系疾患における食欲不振、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、吐血、腹痛、下痢、下血(げけつ)などである。
[渡辺 裕]
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