日本大百科全書(ニッポニカ) 「四条流包丁書」の意味・わかりやすい解説
四条流包丁書
しじょうりゅうほうちょうがき
室町時代の料理書。末尾に「長享(ちょうきょう)三年二月下旬 多治見備後守貞賢(たじみびんごのかみさだかた)在判」とあり、1489年の記録。最初に包丁式の次第が記述され、ついで料理の作り方の説明があって、当時の料理の一部がうかがえる。鳥の焼き物と刺身、かまぼこ、エビの船盛、このわた、タイの潮煮(うしおに)、カニの盛り方などが書かれ、クラゲの和(あ)え物では花がつおを入れるとあり、このころから花がつおの使用されていたことが知れる。刺身ではわさびと食塩とを接して並べるのが四条流で、離して置いてあるのが他流とある。公家(くげ)社会に奉仕した四条流に対し、足利(あしかが)将軍家の包丁人大草公次(おおくさきみつぐ)から始まったのが大草流で、武家社会の伸長とともに新しい流派として発展した。大草流を伝える書として『大草家料理書』『大草殿(どの)より相伝(そうでん)の聞書(ききがき)』があるが、成立年代は不明。料理ことばからみて前者は江戸初期、後者は16世紀なかばころの書とみられる。いずれも『群書類従(ぐんしょるいじゅう)』に収録されている。
[小柳輝一]