日本大百科全書(ニッポニカ) 「焼き物」の意味・わかりやすい解説
焼き物
やきもの
直火(じかび)あるいはオーブンなどの間接加熱で加熱する調理法、あるいは料理。前処理として、調味料をふりかけたり、また浸したりすることはあっても、加熱媒体として水や油を用いないで加熱した料理をいう。歴史的にも古くからある代表的な調理法の一種で、熱源に直接材料をさらす直火焼きが基本的焼き物であるが、鍋(なべ)、アルミ箔(はく)、紙、オーブン、鉄板、陶板などを用いて加熱する間接焼きもある。最近は調理器具、熱源などの種類が多く、種々の焼き物がくふうされている。
焼き物は、調理法のなかで生食に次いでもっとも古いものと考えられる。その理由は、人類が火を使えるようになったとき、最初に行った加熱調理の方法といえるからである。現在でも、原始に近い焼き物料理は多く存在する。また、オーブンの発明により、蒸し焼き料理も出現した。これは直火焼きとは異なり、高熱の気体中で焼くもので、材料の水分が失われにくいという利点がある。
[河野友美]
種類
直火焼き
日本料理では塩焼き、照(てり)焼き、白(しら)焼きなど基本的なものや、調味料をつける魚田(ぎょでん)、うに焼き、黄味(きみ)焼き、調味料に漬けておいてから焼くみそ漬け焼き、粕(かす)漬け焼きなどがある。いずれも、串(くし)を刺す串焼きか金網にのせて焼く網焼きにする。魚の焼き方のこつは、火加減は強火で、遠火にして、放射熱を利用して焼くとよいといわれるが、魚の質や大きさにあわせることが必要である。串は、焼き上がる直前にくるりと回しておくと抜きやすい。金網はよく熱してから、植物油を塗布しておくと焦げ付きにくい。初め熱源に当てる面から6割、裏返して4割加熱し、先に焼いたほうを表面にして盛り付ける。
西洋料理では、グリル、ブロセットなどがある。グリルは、グリル網の上に肉などをのせて焼き、ブロセットは、金属の串に材料を刺し、直火で焼く。バーベキューなどもこれにあたる。また、子豚の丸焼きなどは、直火の上でまるごとの子豚に油を塗りながら、時間をかけて回しながら焼く。中国料理でも焼き豚などは、たれに浸してから直火で時間をかけて回しながら焼き上げる。
野菜は、焼きなすや焼きしいたけのように、旬(しゅん)のものをそのまま焼くものもあるが、一般には下味をつけた野菜に、植物油を塗って焼き、精進(しょうじん)料理の一品として扱う。
[河野友美]
間接焼き
地中に肉、いもなどを埋め、その上でたき火をして焼く方法が、古くから各地にあった。日本での石焼きは、河川や山中の岩石の表面をきれいにし、そこでたき火をして石を加熱した上で魚貝類や生野菜などを焼いた。また、石板を熱してその上でアユなどを焼く方法もある。白身魚を杉板2枚で挟み、杉の風味を材料に移しながら焼く料理を杉焼きといい、室町時代ころから存在している。薄い木板(経木(きょうぎ))を利用しての焼き物は、とくにスギ、ホオノキなど香りのある材質により、とりわけ美味とされる。
洋風の間接焼きはオーブンを用いる。オーブンは天火(てんぴ)ともいい、間接的に熱風を利用して焼くのが特徴で、表面が焦げにくく、じっくりと火を通すことができる。ローストビーフ、ローストポーク、ローストターキーやローストチキンなどが代表的な間接焼きの料理である。
野菜料理はベークドポテトのように、材料そのものを焼くものもあるが、グラタン、キャセロール料理など、いったん調理したものの仕上げにオーブンで焼き上げるものも多い。
[河野友美]