日本大百科全書(ニッポニカ) 「国分煙草」の意味・わかりやすい解説
国分煙草
こくぶたばこ
大隅(おおすみ)国(鹿児島県)の国分地方産の名葉煙草。俗謡オハラ節に「花は霧島、煙草は国分」と謡われ、全国に著名。1606年(慶長11)島津義久(よしひさ)の臣、服部宗重(はっとりむねしげ)が国分郷梅木(うめのき)の地で試作して好結果を得たので、煙草奉行(ぶぎょう)を命ぜられ、姶良(あいら)郡を中心に普及させた。1713年(正徳3)初めて国分煙草の名が全国に紹介され、1780年代に大坂への移出が始まり、1815年(文化12)江戸への売り込みが許可された。1846年(弘化3)の「煙草百種」は、諸葉の最上との折紙をつけた。色と香りがよく、1898年(明治31)専売制実施当時の賠償価格は全国最高級であった。第一次世界大戦後、両切り煙草の嗜好(しこう)が高まり、国分銘葉の需要は減退、いまでは改良品種の黄色葉が栽培されている。
[原口 泉]
『青江秀著『薩隅煙草録』(1881・鹿児島県蔵)』▽『芳即正著「薩摩の煙草」(『日本産業史大系8』所収・1960・東京大学出版会)』