改訂新版 世界大百科事典 「国際審査委員会」の意味・わかりやすい解説
国際審査委員会 (こくさいしんさいいんかい)
国際紛争は,通常,事実問題と法律問題を含むものであるが,単に事実についての見解の不一致からも生じる。国際審査international inquiryは,1899年に第1回ハーグ平和会議で締結された国際紛争平和的処理条約(1907年に改訂)によって初めて設けられたものであり,単に事実上の見解が異なることから生じた国際紛争を国際審査委員会に付託し,その公平誠実な審理によって事実問題を明らかにし,紛争の解決を容易にする制度である。日露戦争のおり,ロシアのバルチック艦隊がイギリスの漁船を日本の水雷艇と見誤って砲撃,損害を与えた英露間の1904年のドッガー・バンク事件は国際審査によってみごとに解決した。しかし,第2次世界大戦前国際審査委員会に付託されたのはわずか3件であり,戦後も62年のイギリス,デンマーク間のレッドクルセーダー号事件のみである。審査付託は義務的でなく,審査報告には拘束力はない等のため,改良の試みがノックス条約(1911),ブライアン条約(1913-14)でなされ,第1次世界大戦後,国際調停制度へと発展した。
→国際紛争
執筆者:芹田 健太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報