日本大百科全書(ニッポニカ) 「国際貸借説」の意味・わかりやすい解説
国際貸借説
こくさいたいしゃくせつ
theory of international indebtedness
イギリスの銀行家であり政治家であったG・J・ゴッシェンが、その著『外国為替(かわせ)の理論』(1861)で唱えたもっとも古い外国為替学説。当時は貿易収支の動向が為替相場の変動要因であるとする考え方が支配的であったが、彼は貿易以外の一方的価値移転(トランスファー)や資本移動も原因になることを認め、それらを国際貸借なる概念に包括した。この国際貸借を今日の用語で正確にいえば国際収支にあたるので、今日では国際収支説balance of payments theoryともよばれる。
この学説は、為替相場を変動させる外国為替の需要・供給を、国際貸借ないし国際収支状況に求めたもので、為替理論に国際収支という数量的に分析しやすい概念を導入した点は評価されているが、国際収支動向が何によって決定されるかを明らかにしていない点に不満が残る。為替心理説、購買力平価説がそれぞれ短期、長期理論とされるのに対し、中期的為替理論として位置づけられる。
[土屋六郎]