日本大百科全書(ニッポニカ) 「土蜘蛛草紙」の意味・わかりやすい解説
土蜘蛛草紙
つちぐもぞうし
絵巻。一巻。源頼光(よりみつ)が郎等の渡辺綱とともに京都神楽岡(かぐらおか)の廃屋で種々の妖怪(ようかい)変化にあい、斬(き)りつけた血の痕(あと)をたどって、西山奥の洞窟(どうくつ)で巨大な土蜘蛛をみつけて仕止める武勇談を叙したもの。物語は鎌倉時代の成立と推定されるが、現存の絵巻(原本は東京国立博物館蔵)は南北朝(14世紀)の作とみられる。御伽草子(おとぎぞうし)的な通俗的内容に比べ、絵は比較的堅実で、この時代の大和(やまと)絵の正系をあまり外れるものでない。土佐長隆(ながたか)筆(13世紀後半)の伝称は確証なく、時代的にもあたらない。
[村重 寧]
『小松茂美編『続日本絵巻大成19 土蜘蛛草紙他』(1984・中央公論社)』