日本大百科全書(ニッポニカ) 「城鍬舞」の意味・わかりやすい解説
城鍬舞
しろくわまい
風流踊(ふりゅうおどり)の一つ。栃木県の温泉神社(大田原(おおたわら)市上石上(かみいしがみ))の10月17日の例祭に奉納される。中世末、大田原城築城のおりに祝賀として始められたという。神社境内や区長宅、祭り当番宅の庭で舞う。大黒頭巾(ずきん)に緞子(どんす)の前掛け姿の軍配を持った団扇(うちわ)とり1名を中心に、花笠(はながさ)をかぶり手甲脚絆(てっこうきゃはん)の早乙女(さおとめ)の少女12名の鍬打ちと、ニワトリの尾羽根をさした烏帽子(えぼし)をかぶり陣羽織、袴(はかま)を着用した太鼓打ち2名、笛吹き3~4名による群舞である。こうした構成や風流ぶりは東北の田植踊に共通する要素があり、ことに福島県の早乙女踊、田植踊、平鍬(ひらくわ)踊に類似する。鍬打ちは昔は男の役であった。鍬の金属部分だけを手に持ち棒で打ち鳴らしつつ踊る。
[萩原秀三郎]