埴土郷(読み)はにごう

日本歴史地名大系 「埴土郷」の解説

埴土郷
はにごう

和名抄」高山寺本は誤って麻殖おえ郡の項に記し、「波迩」と読む。同書伊勢本・東急本は「波尓」と読み、同書名博本は「ハニ」の訓を付す。「日本霊異記」下巻第二〇(法花経を写し奉る女人の過失を誹りて、現に口斜む縁)に、あわ名方なかた郡「埴村」に住む忌部首で名を多夜須子という女性を主人公にした話が記載されているが、この「埴村」は当郷のことであろう。なお「今昔物語集」巻一四では同じ話が阿波国名方郡麻殖おえ村の夜須古の話として現れている。平成一〇年(一九九八)に徳島市国府町観音寺こくふちようかんのんじ観音寺遺跡から「波尓五十戸税三百□ 高志五十戸税三百十四束(後略)」と記す木簡が出土した。ここに現れている「五十戸」について、実数としての戸とする考え方、庚寅年籍(六九〇年)で確立されたとされる「里」(サト)と読む説が出されており、今後の検討を必要とするが、少なくとも大宝令以後の埴土郷の前身としての七世紀後半にさかのぼる波尓「五十戸」(サト)という性格をもつことは間違いなく、その広がりをどのようにみるかは別として、当郷が七世紀後半にまでさかのぼる歴史をもつことが明らかになった。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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