塩吹臼(読み)しおふきうす

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「塩吹臼」の意味・わかりやすい解説

塩吹臼
しおふきうす

日本の民話。海の水がなぜ塩辛いのかという素朴な疑問を,巧みに因果応報の物語と結びつけた起源説話の一つ。貧しい弟が年越しもできず,長者の兄のところへ米を借りに行くが,欲張りな兄はばかにして追返す。その帰途,出会った老人から知恵と麦饅頭を授かった弟は,その饅頭を森の小人石臼と交換するが,この石臼がなんでも望みのものを生み出すものであったため,一夜にして長者となる。これをねたんだ兄は石臼を盗み出し,舟に乗せて海へ出ると,こっそり甘い物を出して食べ,次に塩を欲する。ところが,それを止めるまじないを知らなかったため,塩は舟いっぱいになっても止まらず,ついに舟は沈み兄はおぼれ死ぬが,石臼は海底へ沈み,いまでも塩を吹続けているという話。話に多少の異同はあるが類話は全国に分布し,また中国,朝鮮をはじめ東ヨーロッパや北ヨーロッパの諸国でもみられる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

南海トラフ臨時情報

東海沖から九州沖の海底に延びる溝状の地形(トラフ)沿いで、巨大地震発生の可能性が相対的に高まった場合に気象庁が発表する。2019年に運用が始まった。想定震源域でマグニチュード(M)6・8以上の地震が...

南海トラフ臨時情報の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android