日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩基置換容量」の意味・わかりやすい解説
塩基置換容量
えんきちかんようりょう
土壌が置換(交換)できる置換性塩基の最大量のことで、一般的には陽イオン交換容量とよばれる。土壌肥沃(ひよく)度の一つの指標として営農指導に利用されている。以前は、乾土100グラムが吸収保持できる全塩基量(ミリグラム当量)で表されたが、現在はmolckg-1のSI単位(国際単位系)が用いられる。ただし、非SI単位のcmolckg-1も使用される。土壌はカルシウムなどの陽イオンを吸着するが、これは土壌中に含まれている粘土などのコロイドの作用による。普通の土壌ではコロイドは陰性で、コロイド表面はマイナスに帯電している。したがってコロイド粒子は表面に陽イオンを吸着する。吸着される陽イオンは一般的にカルシウムがもっとも多いが、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、水素など多くのイオンがある。このコロイドに吸着されている陽イオンは溶液中のほかの陽イオンと置換する性質があり、この現象を塩基置換または塩基交換という。正しくは陽イオン交換であるが、陽イオンは水素を除けば塩基であるので塩基置換とよぶ。このとき交換される土壌中の塩基を置換性塩基という。
塩基置換容量の大きな土壌は肥料成分を多く吸収保持することができ、肥沃度の高い土壌と考えられる。粘土分の多い土壌や腐植に富む土壌はこの置換容量が大きく、砂丘未熟土などの砂質の土壌では小さい。
[小山雄生]
『日本土壌肥料学会編『土壌の吸着現象――基礎と応用』(2001・博友社)』