腐植(読み)ふしょく

日本大百科全書(ニッポニカ)「腐植」の解説

腐植
ふしょく

動植物などの生物遺体土壌中の微生物作用などによって分解と腐植化という二通りの経過を経てできた暗色、無定形の土壌固有の有機物のこと。土が多くの場合暗黒色を呈しているのは通常この腐植を含むためで、土色の濃淡によってその存在と含有量とを容易に推測することができる。腐植という用語は、ときに土の中の有機物全体をさすような広い意味に使われる場合もある。それは、腐植が複雑な組成をもった物質群であり単一の物質ではないためで、その量と質は土壌によって著しく違っている。腐植は土に加わった動植物遺体からできるため土壌の表面に多く存在し、植生に重要な役割を果たしている。植物養分の貯蔵庫として、また土壌の団粒構造の形成に土壌粒子間の接着剤として欠かすことができないものである。腐植の作用により作物への水と養分の供給とが円滑になり耕うんも容易になるなど地力のかなりの部分が腐植の質と量によっている。この腐植を土壌中に保持するためには毎年堆厩肥(たいきゅうひ)などの有機物を土に補給し地力を維持する必要がある。

[小山雄生]

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百科事典マイペディア「腐植」の解説

腐植【ふしょく】

土壌学用語。土壌を暗色に色づけている有機化合物群の総称。その供給源は植物遺体で,地中動物に食われ,微生物に分解されて,植物成分中最も分解されにくいリグニンが変質したかたちで残り,一方,微生物体を構成するタンパク質も変質して蓄積,このリグニン,タンパク質の変質物が重合,縮合を繰り返して生成した高分子有機化合物群である。実体は不明の点が多いが,芳香族環状骨格に脂肪族側鎖がついたものとされている。アルカリに溶けないものはフミン,溶けるもののうち強酸で沈殿するものは腐植酸(フミン酸),沈殿しないものはフルボ酸と呼び分類する。腐植は窒素などの植物養分の供給源として重要。また土壌中に水分,熱をたくわえ,構造を形成するなど,土壌の物理的性質を改善する働きも大きい。
→関連項目火山灰土水田

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岩石学辞典「腐植」の解説

腐植

有機性物質で部分的に分解して土壌の一部になったもの.腐植は一般にさらに次のように区分される.(1) ムル(mild humus, mull)は,土壌から植物栄養素を吸収した植物が分解したもので,このような腐植は中性ないし弱酸性の反応を示している.(2) 生の腐植またはモールmor)で,栄養の乏しい環境に適応した植物から発達したもの.これらの腐植は鉱物質に乏しく強い酸性反応を示している[Saussure : 1804, Eyres : 1970].

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「腐植」の解説

腐植
ふしょく
humus

土壌中に集積した動植物の遺骸腐敗分解して生じた物質。普通,黒色を呈する。土壌の有機的成分として重要で,土壌の性質や生産力に影響を与える。

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世界大百科事典 第2版「腐植」の解説

ふしょく【腐植 humus】

土壌学用語。動植物および微生物の遺体は土壌中で生物群集により分解を受け,ポリフェノール類,キノン類,アミノ化合物を生成するが,これらの物質は酵素,微生物の酸化酵素無機イオン粘土鉱物などの触媒作用により重縮合し,土壌固有の暗色無定形コロイド状高分子化合物に変化していく。この暗色物質を腐植物質,分解過程にある生物遺体成分を非腐植物質と呼び,腐植は広義には両者を,狭義には前者を意味する。腐植は,(1)植物養分(Ca2+,Mg2+,K,NH4)の吸着保持,(2)土壌の酸性化の緩和,(3)植物生理活性作用,(4)団粒形成,(5)有用土壌微生物の活動促進,(6)無機養分の供給,(7)難溶性リン酸化合物の生成防止,(8)土壌温度の上昇,(9)水分吸収保持,などの重要な機能を有している。

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