墨継(読み)すみつぎ

精選版 日本国語大辞典 「墨継」の意味・読み・例文・類語

すみ‐つぎ【墨継】

〘名〙
類聚名物考(1780頃)調度部「墨継 すみつぎ 〔今昔物語‐一九〕いかけ地に蒔たる硯の墨継なども世に似ざりけれは 墨柄(がら)にて是を蜷尾ともいふなり」
② 文章を書く場合、筆に含ませた墨が乏しくなったとき、さらに筆に墨を含ませて書くこと。手紙などではこの箇所が隣の行と並ばないようにするとか、敬うべき字の直前でするなどのきまりがある。また、和歌は初、三、五句で、俳句は初、三句で墨をつぐ。
※評判記・色道大鏡(1678)九「仮名遣をもしらねば、吟味するちからもなし、墨継(スミツギ)等の故実もわきまへず」
[補注](1)①の意は「すみつき(墨付)①」に引いた「今昔」の用例を誤り解したもの。
(2)②は書の美しさを決定する大きな要素で、墨の濃淡・潤渇、運筆緩急抑揚などによって墨色に変化が生じるとともに、作品の章法とも深く関わり、作品に立体感や遠近感、強弱明暗などをもたらす。日本では、古くから尊重され、仮名作品、ことに散書の作品では、墨継の位置を計算し、その多様性を効果として表現した。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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