日本大百科全書(ニッポニカ) 「大山参り」の意味・わかりやすい解説
大山参り
おおやままいり
神奈川県伊勢原(いせはら)市にある大山への参詣(さんけい)をいう。大山は相模(さがみ)国にそびえる霊山であり、修験者の行場でもあった。別名雨降(あふり)山ともいわれ、農民の間では雨乞(あまご)いの対象となり、漁民の間では大漁祈願の対象だった。縁起(えんぎ)によると、東大寺の良弁(ろうべん)が鷲(わし)にさらわれてきてこの山を開いたという。大山信仰が関東一円に流布(るふ)し大山講が結成されたのは江戸時代からで、江戸町人の間でも治病をはじめとする現世利益(げんぜりやく)の神として繁盛し、大山街道もにぎわった。旧暦6月27日~月末の初山(はつやま)、7月13~17日の盆山(ぼんやま)はことににぎわった。今日でも関東一円に大山講はわずかに残っているが、神奈川県では大山信仰は人生儀礼とも結び付いている。湯河原町鍛冶屋(かじや)では、12歳で若衆に加入するとき、父子同道で大山詣(もう)でをし、相模原(さがみはら)市緑(みどり)区鳥屋(とや)では、7歳の子が父や祖父に連れられて登拝した。また、大山は先祖の霊の行き着く山とも考えられていた。
[萩原秀三郎]