大脳皮質障害の特徴

内科学 第10版 「大脳皮質障害の特徴」の解説

大脳皮質障害の特徴(局所診断の進め方)

(1)失語(aphasia)
 優位大脳半球の言語野(Broca野,Wernicke野,下頭頂小葉)とその近傍病変によって生じる言語機能の障害である(図15-2-9).復唱,流暢性,理解,物品呼称を発話や会話理解のパラメーターとして,復唱が可能か否かで大きく超皮質性失語と皮質性失語に分けて表15-2-1のように分類すると理解しやすい.読字や書字も侵される.
(2)失行(apraxia)
 認知症や運動麻痺がないにもかかわらず,言語で命ぜられた動作ができない状態である.
1)観念運動失行:
箸やハサミなどの実際の物品は正しく使えるが,物品なしでその動作を模倣することができない状態である.主として優位(左)半球の縁上回近辺の病変でみられる.
2)観念失行:
実際の物品を与えても使えない状態であり,いくつかの物品を続けて使用する動作(たとえば,便せんを折って封筒に入れ,糊付けするなど)が侵されやすい.優位(左)半球の角回近辺の病変で生じる.
3)肢節運動失行:
主として,指先の細かい動作の障害である.中心溝を挟んだ領域の病変で生じるとされる.
(3)失認(agnosia)
 視覚や運動感覚などの感覚情報は大脳に達しているにもかかわらず,それが認識されない状態である.
1)視空間失認:
右中大脳動脈領域の梗塞により生じる頭頂葉病変においてみられる左半側空間無視が典型であり,視野の左半分を無視してしまう.このような患者では眼球が右に偏倚する.頭部も右に回転させた姿位を取ることが多い.
2)病態失認:
自分の身体の明らかな麻痺,盲などの存在を否定する状態である.麻痺の否認はしばしば半側空間無視に伴って生じる.
3)自己身体部位失認:
自己の身体部位の名が言えなかったり,麻痺肢が自分のものであることを認識できない現象である.[中野今治]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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