朝日日本歴史人物事典 「大谷幸蔵」の解説
大谷幸蔵
生年:文政8.5(1825)
幕末・明治期の蚕種商。信濃国更級郡羽尾村(長野県戸倉町)の有力農家に巳代蔵・コノの子として生まれる。幼くして父をなくしたうえ,若気によって博徒となり,大谷家は没落寸前となった。思い直して家を再興するため,地元で産出された紬織物の商いを始め,江戸に売り込んだ。屋号を大黒屋と称し,松代藩の専売制実施の際にも登用された。開港後,蚕種取引に乗り出し,明治3(1870)年から同13年まで4回イタリアに渡って蚕種販売を試みた。同3年の洋行中,松代騒動が発生し,藩側の立場にあったため自邸も農民の焼き打ちにあった。商才にたけていたが,晩年は不遇であったといわれ,またさまざまに評価されている人物である。<参考文献>尾崎章一『蚕界偉人大谷幸蔵』,吉永昭「松代商法会社の研究」(『社会経済史学』23巻3号),『信濃蚕糸業史』上
(松村敏)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報