天保六花撰物(読み)てんぽうろっかせんもの

改訂新版 世界大百科事典 「天保六花撰物」の意味・わかりやすい解説

天保六花撰物 (てんぽうろっかせんもの)

歌舞伎作品の一系統。講談の2世松林伯円(しようりんはくえん)が得意とした《天保六花撰》を題材にした作品群。1823年(文政6)に獄死した河内山宗春(俊)(こうちやまそうしゆん),彼と連座した直次郎(直侍(なおざむらい)),彼となじんだ浅草奥山の茶酌女お直,のちの吉原の遊女三千歳(みちとせ),その他金子市之丞,森田清蔵暗闇の丑松を加えた6人の悪党をめぐる物語を脚色した。その最初の作は1874年10月東京河原崎座上演の河竹黙阿弥作《雲上野三衣策前(くものうえのさんえのさくまえ)》であった。片岡直次郎が暗闇の丑松から巻き上げた50両の金は,直次郎の情婦の弟から丑松が奪ったものであった。弟はこの金のために窮地に陥るので直次郎は金策を河内山に相談する。河内山は質屋上州屋の娘が松江侯の妾に望まれて困っていると知り,上野の使僧に化けて松江の邸へ乗り込み娘を取り戻し,その礼金を直次郎に渡す。これを改作したのが1881年3月新富座上演の《天衣紛上野初花(くもにまごううえののはつはな)》で,この作では金子市之丞のくだり,直次郎と三千歳の情話をからませた。新作として1934年6月東京劇場初演の長谷川伸作《暗闇の丑松》,同年12月東京劇場初演のやはり長谷川伸作《金子市之丞》がある。
河内山宗春
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