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天津罪 あまつつみ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

天津罪
あまつつみ

古代における罪名の一種。大祓詞 (おおばらいのことば延喜式所載) にみえ,畔放 (あはなち) ,溝埋 (みぞうめ) ,樋放 (ひはなち) ,頻蒔 (しきまき) ,串刺 (くしざし) ,生剥 (いきはぎ) ,逆剥 (さかはぎ) ,屎戸 (くそへ) の8種がその例としてあげられている。そのほかにも,『日本書紀』にみえる駒伏,絡 (あぜ) 縄などもその類に属する。その大半は,農耕に関する侵害行為であって,本居宣長『大祓詞後釈』によると,スサノオノミコトが,高天原で犯したに起源するといわれている。しかし,近年は,それを国家社会成立以前の氏族的村落における犯罪目録とする説,あるいは同時代の氏族間における賠償制の対象となる犯罪と解する説,一過性のもので祓により滌除 (てきじょ) しうる行為とする説などが現れ,日本刑事法史のうえで,重視されることになった。なお,天津罪に対して,「ハライ」として,集団あるいは個人祓が科せられたことは疑いがない。しかし,祓は神の怒りをなだめる行為で,これを賠償制と同一視することは困難である。

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百科事典マイペディアの解説

天津罪【あまつつみ】

日本古代の罪の分類。国津罪(くにつつみ)に対する。《延喜式(えんぎしき)》の〈大祓詞(おおはらえのことば)〉では畔放(あはなち),溝埋(みぞうみ),樋放(ひはなち),頻蒔(しきまき),串刺(くしざし),生剥(いけはぎ),逆剥(さかはぎ),屎戸(くそへ)の8種。

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世界大百科事典内の天津罪の言及

【古代法】より

…たとえば,高天原の秩序を乱した素戔嗚(すさのお)尊が,八十万神の合議により千座置戸(ちくらおきど)を科せられたうえで,神逐(かんやらい)すなわち追放刑に処せられたのは,(1)を基盤として生まれた,共同体秩序の侵害者に対する内部的刑罰としての財産没収刑と追放刑(平和喪失)の,神話的表現であったとみられる。またたとえば,天津罪として知られる畔放(あはなち)・溝埋(みぞうめ)・樋放(ひはなち)などの農業用水施設の破壊や,頻蒔(しきまき)(他人が播種した水田に重ねて種をまき,自分の耕作地であると主張する行為)・串刺(くしざし)(収穫期に他人の耕作した田にクシを刺し,自分の耕作地であると主張する行為)などの農業慣行違反等により共同体秩序が犯された場合に行われる大祓(おおはらえ)には,本来は共同体成員全員が参加しなければならなかったと推定されることなどは,こうした慣行が(1)を基盤として生まれたものであることを示している。日本古代においては,(2)を基盤とする法または慣習は,上位の政治権力によって,(1)を基盤とする法または慣習に規制されながらもこれをとりこみつつ,政治的かつ専制的な法として発達したのであった。…

【罪】より

… 日本には古来,人間による悪行とともに穢(けが)れや禍(わざわい)などをも含めた神道的な罪の観念があった。すなわち農耕を妨害して神祭りを冒瀆する天津罪(あまつつみ)や社会秩序を破壊する国津罪(くにつつみ)は前者の悪行に属するが(天津罪・国津罪),同時に死や病気,けがや出産の穢れ,天変地異など人間生活を脅かすものも罪であるとし,それらを除去して正常な状態にひきもどすためいろいろな祓(はらい)や禊(みそぎ)が必要であるとされた。日本の場合,罪は祓や禊によって容易に除去されるという意識が強く働き,先の浄土教的な罪業意識は深くは浸透しなかったといえよう。…

※「天津罪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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