改訂新版 世界大百科事典 「太上道君」の意味・わかりやすい解説
太上道君 (たいじょうどうくん)
Tài shàng dào jūn
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…この分類は唐代前半期の道教教理書《道門経法相承次序》や《道教義枢》などの記述をそのまま継承するものであり,このうち三洞のみの分類は,さらに古く5世紀,劉宋の道士陸修静のころまでは確実にさかのぼりうるであろうが,三洞とは上記のように洞真,洞玄,洞神をいう。 洞真部の道教経典は,《雲笈七籤》巻六に引く唐初に成立の《業報因縁経》に〈元始天尊は亦た天宝君とも名づけ,洞真経十二部を説く〉とあり,道教三尊,すなわち太上老君,太上道君,元始天尊,のうち出現が最も遅く,6世紀半ば以後と推定される元始天尊(〈天尊〉の語は漢訳仏典から始まる)の教誡を経典化したものであるが,この洞真部経典群の内容的な特色は,その代表的な経典《元始無量度人経》や《无上(むじよう)内秘真蔵経》などが最も良く示しているように,用語と思想とに仏教的な色彩の濃厚なことである。もちろん経典内容の基底部をなすものは,祝禱,禁呪,符醮などの天師道教団的な呪術宗教,いわゆる〈鬼道〉であり,儒教の〈神道〉の易学や祭礼の宗教哲学,また老荘道家の〈玄〉と〈真〉と〈元気〉の哲学,いわゆる〈真道〉の神学教理もまたその主要な部分を占めるが,これらの神学教理が仏教の思想哲学と結びつけられ折衷されて,しばしば聖道の教もしくは聖教,聖学とよばれているところに,この経典群の大きな特徴が見られる。…
…その中心となる三洞は,5世紀中ごろ宋の陸修静が《大洞真経》を所依の経典とする上清派(茅山派)の立場からする教相判釈(きようそうはんじやく)を示したもので,成立が古く呪術的性格の強い《三皇経》など道教教理の最下層をなす経典を洞神部に,ついでやや新しい層をなす《霊宝経》などを洞玄部に,そして仏教教理を反映した最新の層をなす《大洞真経》などを洞真部に配する。 一方,道教の最高神は,後漢から東晋頃までは老子を神格化した太上老君であったが,5世紀には老子の説く〈道〉を神格化した太上道君が,6世紀には元始天尊が加上されていき,これに対応して宗教的悟りの境位も太清境の上に上清境,玉清境が次々と加えられた。隋・初唐の道教教理学は仏教教理学に刺激されて,かかる道教教理の歴史的展開の跡を共時的な相において体系化することを目ざし,洞真部は玉清境における元始天尊の所説で大乗聖人の教え,洞玄部は上清境における太上道君の所説で中乗真人の教え,洞神部は太清境における太上老君の所説で小乗仙人の教えという教相判釈を立てた。…
※「太上道君」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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