元始天尊(読み)ゲンシテンソン

デジタル大辞泉 「元始天尊」の意味・読み・例文・類語

げんし‐てんそん【元始天尊】

道教における最高神。道教では多くの神々が信仰されるが、それら神々の頂点に位置する。

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精選版 日本国語大辞典 「元始天尊」の意味・読み・例文・類語

げんし‐てんそん【元始天尊】

  1. 中国の道教で最高とされる神。天地のできる以前に自然の気をうけて生まれ、また、過去にいくたびとなく繰り返されてきた天地の壊滅にもほろびないで、新しく天地の開かれるたびに大道を授け続けてきたという。唐代、太上老君太上道君と併せて三清の神となり、宋以降は玉皇大帝とも呼ばれた。〔隋書経籍志・四〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「元始天尊」の意味・わかりやすい解説

元始天尊
げんしてんそん

道教の最高神。元始天王(げんしてんおう)はその古称。宇宙の原初において根源の一気から化生(かせい)して、天地万物を生み出す造物主であり、超因果・超時空の常住不滅の存在である。道教でいう三十六天の最上天である大羅天(だいらてん)の玉京山上の玄都に住して諸神を統御し、無数劫(ごう)にわたる天地の崩壊と再生のたびに、至上の教えである道教を開示して地上の人間救済にあたる(これを開劫度人(かいごうどじん)という)とされる。道教の最高神は、3、4世紀には道家の祖とされる老子(ろうし)を神格化した太上老君(たいじょうろうくん)であったが、4、5世紀には老子の説く「道」そのものを神格化した太上道君が加上され、6世紀になってさらに元始天尊が加上された。初唐には上記の三神と三洞(さんどう)、三清境、三乗といった重要教理の対応が説かれ、元始天尊を中心とする道教教理体系がいちおう完成する。天尊は教理上は無形無象とされたが、実際には早くから仏像様の像がつくられた。また宋(そう)以降は、玉皇(ぎょくこう)、玉皇大帝などとよばれるようになった。

[麥谷邦夫]

『窪徳忠著『道教史』(1977・山川出版社)』『マスペロ著、川勝義雄訳『道教――不死の探求』(平凡社・東洋文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「元始天尊」の意味・わかりやすい解説

元始天尊 (げんしてんそん)
Yuán shǐ tiān zūn

道教の最高神。自然の気の応現とされる。6世紀後半,北周の甄鸞(けんらん)の《笑道論》にはじめてみえ,先行する最高神〈天始天王〉にとってかわった。がんらい漢訳仏典で使用された〈天尊〉の名をそなえるこの神は,仏教に対抗してつくりだされたものと考えられ,〈自然〉から〈陛下〉にいたる10種の称号をもつのも仏の十号に対応する。唐代に太上老君,太上道君とあわせて三清の神となる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「元始天尊」の意味・わかりやすい解説

元始天尊
げんしてんそん
Yuan-shi Tian-zun

中国,道教の最高神。道教は,最初は太上老君を最高神としていたが,南朝梁の陶弘景になるとそれを下げて,元始天尊を第一位に据えるようになった。諸神仙の主宰者であり,道教の教義は,天尊によって諸神仙に開示され,さらに諸神仙によって現世の人間に示されると考えられた。

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世界大百科事典(旧版)内の元始天尊の言及

【道教】より

…この分類は唐代前半期の道教教理書《道門経法相承次序》や《道教義枢》などの記述をそのまま継承するものであり,このうち三洞のみの分類は,さらに古く5世紀,劉宋の道士陸修静のころまでは確実にさかのぼりうるであろうが,三洞とは上記のように洞真,洞玄,洞神をいう。 洞真部の道教経典は,《雲笈七籤》巻六に引く唐初に成立の《業報因縁経》に〈元始天尊は亦た天宝君とも名づけ,洞真経十二部を説く〉とあり,道教三尊,すなわち太上老君太上道君元始天尊,のうち出現が最も遅く,6世紀半ば以後と推定される元始天尊(〈天尊〉の語は漢訳仏典から始まる)の教誡を経典化したものであるが,この洞真部経典群の内容的な特色は,その代表的な経典《元始無量度人経》や《无上(むじよう)内秘真蔵経》などが最も良く示しているように,用語と思想とに仏教的な色彩の濃厚なことである。もちろん経典内容の基底部をなすものは,祝禱,禁呪,符醮などの天師道教団的な呪術宗教,いわゆる〈鬼道〉であり,儒教の〈神道〉の易学や祭礼の宗教哲学,また老荘道家の〈〉と〈真〉と〈元気〉の哲学,いわゆる〈真道〉の神学教理もまたその主要な部分を占めるが,これらの神学教理が仏教の思想哲学と結びつけられ折衷されて,しばしば聖道の教もしくは聖教,聖学とよばれているところに,この経典群の大きな特徴が見られる。…

※「元始天尊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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