道教の最高神。元始天王(げんしてんおう)はその古称。宇宙の原初において根源の一気から化生(かせい)して、天地万物を生み出す造物主であり、超因果・超時空の常住不滅の存在である。道教でいう三十六天の最上天である大羅天(だいらてん)の玉京山上の玄都に住して諸神を統御し、無数劫(ごう)にわたる天地の崩壊と再生のたびに、至上の教えである道教を開示して地上の人間の救済にあたる(これを開劫度人(かいごうどじん)という)とされる。道教の最高神は、3、4世紀には道家の祖とされる老子(ろうし)を神格化した太上老君(たいじょうろうくん)であったが、4、5世紀には老子の説く「道」そのものを神格化した太上道君が加上され、6世紀になってさらに元始天尊が加上された。初唐には上記の三神と三洞(さんどう)、三清境、三乗といった重要教理の対応が説かれ、元始天尊を中心とする道教教理体系がいちおう完成する。天尊は教理上は無形無象とされたが、実際には早くから仏像様の像がつくられた。また宋(そう)以降は、玉皇(ぎょくこう)、玉皇大帝などとよばれるようになった。
[麥谷邦夫]
『窪徳忠著『道教史』(1977・山川出版社)』▽『マスペロ著、川勝義雄訳『道教――不死の探求』(平凡社・東洋文庫)』
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…この分類は唐代前半期の道教教理書《道門経法相承次序》や《道教義枢》などの記述をそのまま継承するものであり,このうち三洞のみの分類は,さらに古く5世紀,劉宋の道士陸修静のころまでは確実にさかのぼりうるであろうが,三洞とは上記のように洞真,洞玄,洞神をいう。 洞真部の道教経典は,《雲笈七籤》巻六に引く唐初に成立の《業報因縁経》に〈元始天尊は亦た天宝君とも名づけ,洞真経十二部を説く〉とあり,道教三尊,すなわち太上老君,太上道君,元始天尊,のうち出現が最も遅く,6世紀半ば以後と推定される元始天尊(〈天尊〉の語は漢訳仏典から始まる)の教誡を経典化したものであるが,この洞真部経典群の内容的な特色は,その代表的な経典《元始無量度人経》や《无上(むじよう)内秘真蔵経》などが最も良く示しているように,用語と思想とに仏教的な色彩の濃厚なことである。もちろん経典内容の基底部をなすものは,祝禱,禁呪,符醮などの天師道教団的な呪術宗教,いわゆる〈鬼道〉であり,儒教の〈神道〉の易学や祭礼の宗教哲学,また老荘道家の〈玄〉と〈真〉と〈元気〉の哲学,いわゆる〈真道〉の神学教理もまたその主要な部分を占めるが,これらの神学教理が仏教の思想哲学と結びつけられ折衷されて,しばしば聖道の教もしくは聖教,聖学とよばれているところに,この経典群の大きな特徴が見られる。…
※「元始天尊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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