子どもの貧血(読み)こどものひんけつ(英語表記)Anemia in children

六訂版 家庭医学大全科 「子どもの貧血」の解説

子どもの貧血
こどものひんけつ
Anemia in children
(子どもの病気)

どんな病気か

 貧血というのは、血液のなかの赤血球が足りなくなる病態を指します。赤血球の不足は、その数、血色素(けっしきそ)ヘモグロビン)の量、赤血球量の血液全体量に占める割合(ヘマトクリット)の低下で明らかになります。

 表6に赤血球系の基準値を示します。MCVというのは赤血球1個の容量を示す指標で、数値が小さければ赤血球のサイズが小さいことになります。

 小児全般では、普通、ヘモグロビンの量が11g/㎗以下を貧血としています。

原因は何か

 なぜ、貧血は起こるのでしょうか(表7)。

①赤血球生成能力が低下する

 これには、赤血球の元の幹細胞(かんさいぼう)に異常がある場合や、それを取り囲む環境の異常、ほかの病気によるものがあります。

②赤血球を作るための材料が不足する

 鉄やビタミンB12葉酸(ようさん)などの不足で赤血球がうまく作れなくなります。

③赤血球の寿命が短い

 先天的なもの(生れつきのもの)と後天的なものがあります。早く壊されてしまうので生成が追いつきません。

④赤血球の喪失が起こる

 出血で赤血球が失われ、生成が追いつきません。

症状の現れ方

 赤血球は全身組織酸素を運ぶはたらきをしています。そのため、赤血球が減る(貧血)と、心臓はどきどき速く打って不足を補おうとします。貧血になると赤血球量の不足、酸素供給の不足、心臓の負担増加によってさまざまな症状が現れてきます(表8)。そのほか、各種の貧血に特有なものは、別の項で述べます。

細谷 亮太


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「子どもの貧血」の解説

こどものひんけつ【子どもの貧血 (Anemia)】

 子どもは、ふつう新生児期では多血症(たけつしょう)ぎみなので、貧血がおこることはまれです。
 しかし、さまざまな原因で、鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)、巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)、再生不良性貧血(さいせいふりょうせいひんけつ)、溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)、続発性貧血(ぞくはつせいひんけつ)などがおこることがあります。このなかでも多いのは、鉄欠乏性貧血です。
 授乳中のお母さんは、鉄分の消費がふえ、母乳に含まれる鉄分が不足するために、母乳だけで育てられている赤ちゃんは鉄欠乏性貧血になることがあります。からだの発育がさかんなこともこれを助長しています。
 幼児以降の鉄欠乏性貧血は、たいていは鉄分の摂取不足が原因です。牛乳レバーなど鉄分を多く含む食品を適宜与えることが必要です。
 新生児溶血性黄疸(しんせいじようけつせいおうだん)(「新生児溶血性黄疸」)のほか、「子どもの鉄欠乏性貧血」が、子どもに代表的な貧血です。そのほかの貧血は、原因、治療などおとなの場合と同じです。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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