日本大百科全書(ニッポニカ) 「定着魚」の意味・わかりやすい解説
定着魚
ていちゃくぎょ
sedentary fish
河川や湖沼の底部、海の底部や藻類などで定着して生活する魚類の総称。いつも水中を遊泳または浮遊する魚類あるいは回遊魚に対して用いられる。ドジョウ類、ナマズ類、タツノオトシゴ類、ヨウジウオ類、ネズッポ類、ハゼ類、ベラ類、クサウオ類、コチ類、カレイ・ヒラメ類、アンコウ類などが定着魚の代表である。季節に関係なく防波堤などでいつも釣れるカサゴ・ソイ類、アイナメ類、クロダイ、メジナなどの定着魚は釣り人の好対象魚となる。定着魚の多くは、遊泳魚のように体が紡錘形ではなく扁平(へんぺい)であり、胸びれや腹びれが体の支持や定着などに適するよう鰭膜(きまく)がなくなったり、鰭条が肥厚したりする。また、定着魚には口や吻(ふん)にひげがあり、目が背方に位置するものが多い。これは、水底の獲物を探したり、底土の中に潜入して外敵の攻撃を避けたりするためである。
定着魚の多くは運動能力が低く、大きな群れをつくらない習性がある。このような魚類は成育場で産卵するか、産卵場が成育場に接近していて大きな移動をしない。しかし、中・大形のカレイ・ヒラメ類やアンコウ類では、産卵場や越冬場が成育場から相当に離れているため、南北または深浅移動する。
[落合 明・尼岡邦夫]