大学事典 「実験カレッジ」の解説
実験カレッジ
じっけんカレッジ
正規の大学の機能を保持しつつ,革新的な教育上の実践を試みるアメリカ合衆国のカレッジを指す。かつては,古代ギリシアと現代社会問題の統合を探求したミクルジョンの「実験カレッジ」,リベラルアーツと学外での労働体験とを結合したアンティオック・カレッジ(アメリカ),芸術教育を中核に据え多くの創作家を育んだブラック・マウンテン大学等が全米の注目を集めた。現在では,エヴァーグリーン州立大学(アメリカ)やアルバーノ大学(アメリカ)がその代表と目される。前者では,複数の教員が担当する大科目,たとえば中国事情ひとつのみを各学期に履修する。後者では,履修する各科目の評定は,全学に共通な八つの能力領域に関し教員と地域の識者,学生の相互作用の過程を経て,各学生に1(正確な観察力)から6(構造と構成の分析力)までの数字が与えられ,学生のポートフォリオを形成する仕組みを採用している。既存の大学の多くは,実験的な試みの成果を教学に反映させる。建国以来,過去の教育モデルへの固執を戒め,社会変化に応じた変革を国是とする合衆国では,実験カレッジの役割はその名声に比して大きいといえる。
著者: 立川明
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報