屈ず(読み)クンズ

デジタル大辞泉 「屈ず」の意味・読み・例文・類語

くん・ず【屈ず】

[動サ変]もと「くっす」と促音で発音されたものを撥音「ん」で表記したもの》思いなやむ。気がふさぐ。心が沈む。
「うち語らひて、いといたう―・じ給へり」〈竹河

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精選版 日本国語大辞典 「屈ず」の意味・読み・例文・類語

くん‐・ず【屈】

  1. 〘 自動詞 サ行変 〙 ( もと「くっす」と促音で発音されたものを、撥音で表記したもの ) くよくよと思いなやむ。心が沈む。気がふさぐ。くっす。くす。
    1. [初出の実例]「此事にすくせなき日なめりとくんして」(出典:三巻本一本枕(10C終)九五)
    2. 「面影におぼえて悲しければ、月の興もおぼえず、くんじ臥しぬ」(出典:更級日記(1059頃))

屈ずの語誌

古く促音の表記が一定でなかったことから生じた語形。特に、促音とn音とは、もともと表記上区別されず促音は、仮名文献では、古くは無表記であるのが一般的であり、同じくn音も無表記であるのが一般的であった。また、tとnの音は、調音点が近く、それぞれ「レ」という同じ符号で示されることがあった。このような促音とn音との表記上の混同背景として、「くす」「くんず」の両表記が生じたものと考えられる。

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