日本大百科全書(ニッポニカ) 「山越阿弥陀」の意味・わかりやすい解説
山越阿弥陀(やまごえのあみだ)
やまごえのあみだ
阿弥陀如来(にょらい)の来迎(らいごう)図の一種。「やまごしのあみだ」とも読む。阿弥陀如来と菩薩(ぼさつ)とが山の向こうから半身を現して念仏する人のため来迎し、極楽に救いとろうとする様相を描写したもの。この図様は中国の敦煌(とんこう)の壁画のなかにすでにあるが、日本では、恵心僧都(えしんそうず)源信が比叡山(ひえいざん)横川(よかわ)で感得した形を伝えたものとする。京都の金戒光明(こんかいこうみょう)寺本は阿弥陀三尊が山の彼方(かなた)から半身を現し、京都の禅林寺本は三尊のうち観音(かんのん)・勢至(せいし)の両菩薩が山を越えて念仏者に近づくところを描く。この2本は代表的であるが、金戒光明寺本は説法印を結び、その手に五色の糸がつけられており、この糸を引いて臨終時に安心して阿弥陀のもとに往生しようという風習の残りである。
[石上善應]