精選版 日本国語大辞典 「仏画」の意味・読み・例文・類語
ぶつ‐が ‥グヮ【仏画】
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仏教絵画のことで、広義には仏教の宗教活動のために描かれた仏教を主題にした絵画の総称。狭義には仏教彫像(仏像)に対応する意味に用いられ、礼拝(らいはい)の対象となる仏教の尊像を表した画像をさす。
仏教の絵画活動は、インドの仏教建造物の側壁、天井、龕(がん)、柱などを彩色の絵画や文様により荘厳(しょうごん)することから始まった。仏伝によると、釈尊在世時代に仏画が描かれたように記すものがあるが、これは現在のところ疑問視され、遺品のうえからインドのアジャンタ石窟(せっくつ)のうち初期のものが紀元前1世紀から紀元後1世紀ごろに開かれていることや、その他の資料により、仏画の制作が一般に行われるようになったのは紀元前後と推測される。
仏教が広まった各地方では、インド、チベット、中央アジア、中国、朝鮮、東南アジア、日本など仏教建造物の形式はさまざまであったが、それらを荘厳する風習は受け継がれていった。やがて荘厳のための仏画のほかに、日常礼拝のための本尊や、特別の宗教行事に用いるための尊像を描いたものが各地でつくられるようになり、地域によって特色を備えたものが数多く制作された。さらに密教や浄土教などの教派の登場により、それまでみられなかった教派特有の内容を表した仏画も描かれ、その種類は多種多様となった。
仏画の古い作例は、インドや中央アジアの仏教石窟寺院にみられる。インドのアジャンタ石窟には前1世紀にさかのぼる壁画の一部が保存され(第10窟左側廊)、続く第2期の4~6世紀にわたる仏伝を主題にした壁画は古代仏画の白眉(はくび)と目される。アフガニスタンのバーミアン石窟の天井画や壁画などは5世紀前後ごろとされるが定説をみない。なお、バーミアン石窟の天井画と壁画は2001年タリバン政権により破壊され大部分が失われた。スリランカのシーギリヤの岩壁画(5世紀末ごろ)も仏画とみなされる。中央アジアでは中国甘粛(かんしゅく)省、新疆(しんきょう)ウイグル自治区に残る数々の石窟の壁画が名高い。そのうち敦煌莫高窟(とんこうばっこうくつ)の壁画は、北魏(ほくぎ)より元代にわたる各時代の仏画の変遷を伝える貴重な作例であり、キジル石窟、クムトラ石窟、ベゼクリク千仏洞の壁画は西域(せいいき)の独自の仏画の典型をなし、ミーラン遺跡から発掘された壁画の断片にも仏画が多くみられる。このほかチベットやネパールなどにおいてはタンカと称する独特な仏画が制作された。
日本では、白鳳(はくほう)時代から寺院の壁画に仏画が描かれた。法隆寺金堂の壁画はとくに有名で、唐代洛陽(らくよう)をはじめとする大陸の影響を示している。平安時代に入ると密教寺院の一部に受け継がれ、堂塔内部の板絵や、絹地や紙本に描かれるようになり、仏画の制作の隆盛をみるに至り、芸術的にも優れたものがきわめて多く、日本絵画史のなかで大きな比重を占めている。
なお、近代日本における仏画は、後述する伝統的仏画の系統から離れ、多くの日本画家によって、創作的な意図のもとに描かれるのが一般となった。いずれも儀軌の制約に縛られることなく、広く仏教の世界から題材を設定、自由に描かれるようになり、近代絵画としても優れた作品が少なくない。
[永井信一]
伝統的仏画は、内容的には、次のとおりに大別される。
[永井信一]
法会、修法、礼拝の際の本尊として、釈迦(しゃか)、阿弥陀(あみだ)、薬師、観音(かんのん)、普賢、不動といった如来(にょらい)や菩薩(ぼさつ)、明王などを描いたもの。
[永井信一]
経典の内容をわかりやすく絵画にしたもの。経変ともいう。これには、一つの経典に説かれている主旨や重要な場面を一幅あるいは多数の画面にまとめたもの(報恩経変、弥勒(みろく)下生経変、維摩(ゆいま)経変、観経変、法華(ほけ)経変など)、地獄を描いた地獄変、阿弥陀・釈迦・薬師・弥勒など特定の仏の浄土を描いた浄土変相図、また特定の一尊を中心にこれに群像を配したもの(観音変相、不空羂索(ふくうけんじゃく)変相、閻魔(えんま)変相など)などがある。そのほか、釈尊が涅槃(ねはん)に入ったありさまを描く仏(ぶつ)涅槃図は涅槃変相図であり、臨終に際し阿弥陀如来の来迎(らいごう)する光景を描く阿弥陀来迎図は、「観経変」の一部として描かれたのに端を発し、のちに独立したものである。
[永井信一]
密教の世界を構成する諸尊を、一定の規則に従って図式的に配列したもの。真言(しんごん)密教の盛行に伴い、修法の本尊として各種の曼荼羅図がつくられた。諸尊の表し方により、(1)尊形曼荼羅(諸尊の形像を描いて配列したもので、大曼荼羅ともいう)、(2)三昧耶(さんまや)曼荼羅(尊形のかわりに諸尊の持物(じもつ)・印契などだけで表したもの)、(3)種子(しゅじ)曼荼羅(諸尊をそれぞれ固有の梵字(ぼんじ)で象徴するもので、法曼荼羅ともいう)、(4)羯磨(かつま)曼荼羅(諸尊の威儀の姿、所作の働きを示したもの)の4種がある。
また、構成の仕方により、大日(だいにち)如来を中心に諸尊のすべてをもって構成した両界(りょうがい)曼荼羅(金剛界と胎蔵界の2面よりなる)と、特定の修法本尊を中心とする別尊曼荼羅(一字金輪(いちじきんりん)曼荼羅、如意輪(にょいりん)曼荼羅など)の二つに大別される。なお、本地垂迹(ほんじすいじゃく)美術においても、春日(かすが)曼荼羅、熊野曼荼羅以下、種々の曼荼羅とよばれる一連の絵画が描かれているが、これらは密教でいう曼荼羅の拡大解釈による名称の転用にすぎない。
[永井信一]
地獄、餓鬼、畜生、阿修羅(あしゅら)、人、天という、生あるものすべてが輪廻転生(りんねてんしょう)する6種の境界を図絵し、因果応報の理を示す絵画作品。この天の六道に、四聖(声聞(しょうもん)、縁覚(えんがく)、菩薩、仏)をあわせて十界(じっかい)(十法界)とした十界図もあるが、わが国には遺例は少ない。
[永井信一]
釈尊の前生である本生(ほんしょう)話やその伝記、あるいは宗祖や高僧の伝記、そのほか仏教にまつわる伝説などを図示したもの。羅漢図、禅機図などもこれに含まれる。
そのほか、密教の体系化に伴い、仏像の儀軌を厳格に規定するための、白描画(はくびょうが)風の仏教図像も仏画の研究にとって不可欠な遺品になっている。
[永井信一]
『高崎富士彦著『日本仏教絵画史』(1966・求龍堂)』▽『高田修・柳沢孝一著『原色日本の美術7 仏画』(1970・小学館)』▽『亀田孜著『仏教説話絵の研究』(1979・東京美術)』▽『永井信一・弦田平八郎他編著『明治・大正・昭和の仏画仏像』全3巻(1986~87・小学館)』
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