改訂新版 世界大百科事典 「岩寺洞遺跡」の意味・わかりやすい解説
岩寺洞遺跡 (がんじどういせき)
Amsadong-yujǒk
大韓民国ソウル特別市江東区にある,西海岸中部地方の櫛目文土器(新石器)時代の代表的集落遺跡。1925年に遺跡が発見されて以後,遺物の表面採集が盛んに行われた。60年以降,通算すると10次近い発掘が実施された。遺跡は漢江左岸の沖積砂丘台地に立地する。これまでに十数基以上の竪穴式住居跡が重複した状態で検出され,住居や集落の構造解明に資するところが大きい。竪穴式住居跡には平面形が隅丸方形と円形の2種類がある。底面のほぼ中央には,方形あるいは円形の石囲いの炉跡がある。多量の櫛目文土器とともに,鞍形すり臼,石斧,石鏃などの石器が出土した。櫛目文土器は,形態の変化に乏しく,いずれもトチの実形をした深鉢が多いが,鉢などもある。ともに綾杉文で整然と飾られる。遺跡は,櫛目文土器文化を主体として長期間にわたるが,無文土器文化,原三国文化,あるいはさらに三国時代百済文化まで時代が下るものも認められる。
執筆者:西谷 正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報