日本大百科全書(ニッポニカ) 「岩屋の草子」の意味・わかりやすい解説
岩屋の草子
いわやのそうし
室町期の物語。作者不詳。継子(ままこ)物恋愛譚(たん)で『対(たい)の屋姫(やひめ)』とも称す。清和(せいわ)天皇のころ、堀河中納言(ちゅうなごん)の先妻の姫が四位少将と結婚するが、後妻の奸策(かんさく)で海中の岩に置き去りにされ、四位少将は出家遁世(とんせい)してしまう。明石(あかし)の海士(あま)夫婦に助けられた姫は、二位中将にみいだされて都に伴われ、中将の母や姉妹の翻弄(ほんろう)にもめげず妻となる。姫はわが子の袴着(はかまぎ)の縁で父に再会でき、父は後妻を離縁、後妻は狂死する。『風葉和歌集』に歌が残る散佚(さんいつ)物語『いはや』の改作か否かで論争がある。『ふせやの物語』『秋月物語』『美人くらべ』などと近似する当時流行の作品。
[秋谷 治]
『松本隆信編『新潮日本古典集成 御伽草子集』(1980・新潮社)』