一般に、夫婦別れのことを離縁というが、法律上は、縁組(養子縁組)によって発生したすべての親族関係を、将来に向かって消滅させることをいう。
まず、縁組の当事者は協議により、離縁届を出すことによって、離縁することができる(協議離縁。民法811条1項)。養子が15歳未満のときは、代諾離縁協議者が代諾するが、だれがそれであるかについては、場合を分けて規定されている(同法811条2項以下)。夫婦である養親が未成年の養子と離縁する場合は、夫婦の一方が意思を表示することができないときを除いて、夫婦は共同して離縁しなければならない。夫婦の一方が意思を表示できないときは個別に離縁ができる。また未成年養子の場合を除いて、すべて個別離縁が許される。
協議離縁ができないときは、調停の申立てをして、調停により離縁をしてもらうことができ(調停離縁。家事事件手続法244・257条)、調停も成立しないときは、場合により審判によって離縁してもらうことができる(審判離縁。同法277条)。それもできない場合、縁組の当事者の一方は、
(1)他の一方から悪意で遺棄されたとき
(2)他の一方の生死が3年以上不明なとき
(3)その他縁組を継続できないような重大な事由があるとき
などの場合に限り、地方裁判所へ訴えを起こし、その判決によって離縁することができる(判決離縁。民法814条)。
離縁により、縁組によって生じたすべての効果は、将来に向かって消滅し、原則として、養子は縁組前の氏に復し、縁組前の戸籍に復籍し、養子が未成年のときは実親の親権が復活し、実親がないときは未成年後見が開始される。もっとも配偶者とともに養子縁組をした養親の一方のみと離縁した場合は、養子は復氏しない。また、離縁により復氏した養子は、縁組後7年経過していれば、離縁の日から3か月以内に「離縁の際に称していた氏を称する届」をすることによって、縁組中の氏を称することができる(縁氏続称。同法817条)。なお、縁組の当事者の一方が死亡したときは、他の一方は家庭裁判所の許可を得て、離縁届を出すことができる(死後離縁。同法811条6項)。
特別養子については、離縁は原則として認めず、ただ、(1)養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があり、かつ(2)実父母が相当の監護をすることができる場合であって、しかも(3)養子の利益のためとくに必要があると認めた場合に限り、家庭裁判所は、養子、実父母、または検察官の請求により、縁組の当事者を離縁させることができる(同法817条の10)。離縁により、養子と実父母およびその血族との間には、特別養子縁組によって終了した親族関係と同一の親族関係が生ずる。そのほかは普通離縁の場合と同様である。以上、離縁に関する法律的準拠は、民法第2節第4款・第5款(811条~817条の11)による。
[山本正憲・野澤正充 2016年5月19日]
俗には婚姻の解消の意でも用いられるが,現行法上は養子縁組の解消をいう。民法は離縁を〈離婚〉とほぼ同じようにとらえている。そのため離縁の方式も,〈離婚〉と同じく,当事者の合意を届け出る〈協議離縁〉(民法811条),当事者の協議が不調のときは家庭裁判所の関与により成立する〈調停離縁〉および〈審判離縁〉(家事審判法に基づく),法定の事由(悪意の遺棄,養子の3年以上の生死不明,そのほか縁組を継続しがたい重大な事由)がある場合に当事者の一方が訴えて裁判所が離縁の判決をする〈裁判離縁〉(814条)の3種が認められている。協議離縁の無効・取消しも協議離婚のそれと同じである。ただし15歳未満の養子の協議離縁は,離縁後の法定代理人(親権者となる実親の双方または一方,親権者がいない場合に家庭裁判所で選任される後見人)が養子に代わって協議の当事者となる。裁判離縁の場合の訴えの当事者も同様である。また特殊な離縁として,養親または養子の死亡後に家庭裁判所の許可を得て行う離縁がある(811条6項)。配偶者死亡後の姻族関係終了の手続に類似するが,養親または養子の一方的意思によるところから〈単独離縁〉とよばれる。養子縁組後に養親の一方が死亡した場合,生存養親との協議離縁をしただけでは,死亡養親の血族との間の親族関係が消滅しないことに注意を要する。離縁によって養親子関係が消滅するのはもとより,養子と養親の血族との間の親族関係,養子縁組後の養子の配偶者・縁組後の養子の直系卑属(縁組前の直系卑属は縁組の効果をうけない)と養親およびその血族との間の親族関係などの法律効果はすべて消滅する。離縁によって養子は縁組前の氏に復するが,縁組後7年を経過している場合には,縁組当時の氏を称することができる(816条2項)。また,養子が承継した祭祀(さいし)財産(祭具,墳墓,系譜)の承継者を離縁の際に定めなければならない。
→養子
執筆者:山畠 正男
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…とすれば,ここには,一夫一婦制家族を原則的に守ろうとする幕府の期待がこめられていることがしられるであろう。もっとも,それでも,離婚するときには,夫が妻に去状(さりじよう)(離縁状)を与えることが必要だった。これがないと,その妻はあらたに改嫁=再婚することができないからである。…
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