国指定史跡ガイド 「嵩山蛇穴」の解説
すせのじゃあな【嵩山蛇穴】
愛知県豊橋市嵩山町にある横穴。市の北東部、標高約140mの山腹斜面に位置し、天然の石灰岩洞窟(鍾乳洞)を利用して営まれた岩陰住居跡である。嵩山は本坂峠を越えて静岡県の三ヶ日(みっかび)に通じる街道が走る交通の要衝で、蛇穴の名の由来は大蛇が住んでいたからという。発掘調査の結果、洞窟入り口付近の堆積土から、縄文草創期~中期ごろまでの土器や石器、骨角器、獣骨など数多くの遺物が発見され、炉と考えられる跡も確認された。開口部の高さは約1.3m、幅約3.5mとややせまいが、少し入ると平坦地が広がり、天井も高くなって70mほど奥まで入れる。付近一帯は石灰岩層が広がっていくつかの鍾乳洞も見られ、草創期の表裏押圧文(ひょうりおうあつもん)土器や早期の押型文土器、石器では敲石(たたきいし)や礫器(れっき)、骨角器では骨針や骨錐、ほかに貝製品や有孔土製円盤も発掘されている。この洞窟は早期縄文式文化の痕跡があり、この時代の洞窟遺跡としてまれな例であることから、1957年(昭和32)に国の史跡に指定された。JR東海道新幹線ほか豊橋駅から豊鉄バス「嵩山」下車、徒歩約10分。